野菜を食べると健康リスクを抑えられる 野菜にはどんなサプリよりも強い効果が がんや腎臓病も予防

 ホウレンソウやキャベツなどの葉物野菜を多く食べている人は、血圧が低く、心臓病のリスクも少ないという調査結果が発表された。
 野菜を十分に食べている人は、ストレスレベルも低く抑えられているという研究も報告されている。
 日本人を対象とした研究でも、1日に350gの野菜を食べると、心血管疾患、がん、糖尿病性腎症などの負担を大きく減らせることが明らかになった。
葉物野菜を食べている人は心臓病リスクが少ない

 多くの国で心血管疾患で亡くなる人が多く、心血管疾患は世界で毎年約1,790万人の命を奪っている。しかし、ホウレンソウやキャベツなどの葉物野菜を多く食べている人は、血圧が低く、心臓病のリスクも少ないという調査結果が発表された。

 オーストラリアのエディスコーワン大学の研究グループは、デンマークで実施されている大規模調査「デンマーク食事・がん・健康研究」に参加した5万人以上を、23年間にわたり追跡して調査したデータを解析。研究開始時の参加者の年齢(中央値)は56歳だった。

 その結果、ホウレンソウやキャベツなどの葉物野菜を多く食べている人は、収縮期血圧が平均で約2.5mmHg低く、心臓病のリスクが12~26%低いことが明らかになった。

 「野菜を十分に食べることは、肥満や2型糖尿病を予防・改善するのに役立つだけでなく、心臓病を予防するためにも勧められます」と、同大学栄養研究所の主任研究員であるキャサリン ボンドンノ氏は言う。

野菜はサプリよりも効果がある

 研究グループは、野菜の摂取量を知るために、硝酸塩の量を測定。硝酸塩は、ホウレンソウ、レタス、リーフレタス、キャベツなどの葉物野菜に多く含まれる。野菜300gに含まれる硝酸塩は60mg程度だ。

 その結果、葉物野菜を毎日1カップ(200~300g)以上食べている人は、心臓発作、心不全、脳卒中、末梢動脈疾患などの発症が少なかった。

 「野菜を毎日食べることは、心臓病の予防など、健康に利益をもたらします。野菜を十分に食べていれば、ビタミン・ミネラルなどの入ったサプリメントは必要ないでしょう」とボンドンノ氏は言う。

 ただし、人気の高いバナナやベリー、ホウレンソウなどの市販されているスムージーは、糖質を加え飲むやすくしてあるものがあり、さらに果肉や食物繊維が取り除かれているおそれがあるので、あまり勧められないという。

野菜を食べている人はストレスも低い

 エディスコーワン大学栄養研究所の別の研究では、野菜を十分に食べている人は、ストレスレベルも低く抑えられている傾向があることも分かった。

 研究グループは、「オーストラリア糖尿病・肥満・ライフスタイル研究」に参加した25~91歳のオーストラリア人8,600人以上を対象に、野菜や果物の摂取量とストレスレベルとの関係を調べた。

 その結果、野菜や果物を毎日470g以上食べていた人は、230g未満しか食べていない人にくらべ、ストレスレベルが10%低いことが分かった。

 「野菜や果物には、炎症や酸化ストレスを軽減するビタミン、ミネラル、フラボノイド、カロテノイドなどの重要な栄養素が含まれます。これらがメンタルの健康を改善するのに役立っている可能性があります」と、同研究所のシモーヌ ラダベリ-バガティニ氏は言う。

 「ストレスを管理していない状態が長期間に及ぶと、心臓病、2型糖尿病、肥満、うつ病、不安神経症などのさまざまな健康問題が引き起こされます。メンタルヘルスの問題に対処し、ストレスを軽減する方法をみつける必要があります」としている。

 オーストラリアで野菜の推奨量を毎日摂っている成人は10人に1人程度、果物については2人に1人程度だという。

1日に350gの野菜を食べると健康リスクが大きく低下

 日本人を対象とした研究でも、1日に350gの野菜を食べると、心血管疾患、がん、糖尿病性腎症などの負担を大きく減らせることが明らかになった。

 研究は、東京大学大学院医学系研究科国際保健政策学教室の田中詩織氏らによるもの。研究成果は「BMC Public Health」に掲載された。

 厚生労働省などが推進している国民健康づくり運動「健康日本21」では、成人の1日の野菜摂取量を350g以上とする目標が掲げられている。

 研究グループは、1995年以降の国民健康・栄養調査のデータをもとに、次の4つのシナリオを比較した。
 (1)野菜の摂取量の減少傾向がそのまま続く場合、(2)1日平均350gという目標が2023年に達成され維持される場合、(3)目標が2040年に達成される場合、(4)野菜摂取量が過去最低だった年に向かって減り続ける場合。

野菜を食べると心血管疾患やがんのリスクも低下

 疾病による障害や早期死亡のために失われた健康的な生活の損失の程度をあらわす指標である「障害調整生命年(DALYs)」を比較したところ、野菜の摂取量が増えると、DALYsの上昇が抑制され、疾病負担が少なくなることが示された。

 DALYsは、たとえば20~49歳の女性の心血管疾患や全年齢のがんで、(2)と(3)のシナリオが良好な結果をもたらした。男性の糖尿病性腎臓病についても、(2)のシナリオが良い結果になった。

 野菜摂取量の目標である1日350gを早く達成するほど、日本人の疾病負担を大きく減らせることが示された。実際には、2019年「国民健康・栄養調査」では、成人の野菜摂取量は平均280.5g(男性 288.3g、女性 273.6g)で、目標に達していないだけでなく、10年前の2019年の295.3gよりも減っている。

 「野菜摂取量を増やすと、日本人のがん、糖尿病性腎臓病、心血管疾患のDALYsを大幅に軽減することを期待できます。しかし、日本人の野菜の摂取量は減少傾向にあります。野菜摂取について、さまざまなシナリオで将来の疾病負荷を推定することで、保健指導など的を絞った介入ができるようになると考えられます」と、研究者は述べている。

One Cup Of Leafy Green Vegetables A Day Lowers Risk Of Heart Disease(エディスコーワン大学 2021年5月4日)
Vegetable Nitrate Intake, Blood Pressure And Incident Cardiovascular Disease: Danish Diet, Cancer, And Health Study(European Journal of Epidemiology 2021年4月21日)
Eating More Fruit And Vegetables Linked To Less Stress, Study Finds(エディスコーワン大学 2021年5月14日)
Fruit And Vegetable Intake Is Inversely Associated With Perceived Stress Across The Adult Lifespan(Clinical Nutrition 2021年4月9日)
Projections Of Disability-Adjusted Life Years For Major Diseases Due To A Change In Vegetable Intake In 2017-2040 In Japan(BMC Public Health 2021年4月21日)