くすり教育と薬物乱用防止教育の充実を

一般社団法人 日本くすり教育研究所
代表理事 加藤 哲太

セルフメディケーションが注目される社会背景の中、教育の場においても「くすり教育」の必要性が認識され、現在、学習指導要領改訂で、中学校・高等学校の保健体育:保健分野において、「医薬品の適正使用」に関する教育が行われている。社会のニーズに従って、義務教育の場でも、セルフメディケーションの基盤づくりとしての「くすり教育」が実施されている。

しかし「諸刃の剣」といわれるように、医薬品は人の健康を守るために必要なものである一方、使用法を誤れば健康を害するものともなる。従って「くすり教育」は、単なる知識の修得ではなく、状況に応じて自分で判断し行動できる能力を養うことが重要となる。

「用法・用量を守りなさい。」ではなく、なぜ用法・用量を守らなければいけないのか。
「水又はぬるま湯で飲みなさい。」ではなく、なぜ水又はぬるま湯で飲まなければいけないか。
「副作用に気を付けなさい。」ではなく、なぜ副作用が起こるのか。

さらに、医薬品はなぜ必要なのか。これらを児童・生徒の理解度に合わせ、繰り返し教育する中で、医薬品の適正使用に関する考え方とセルフメディケーションに関する対応能力の育成が行われると考える。こうした医薬品に関する正しい知識は、薬物乱用防止教育においても基盤となる。

青少年の薬物汚染は、「不良生徒が盛り場で始める」という以前多く見られた環境だけでなく、ごく普通の生徒でも薬物を入手・使用できる環境で広がってきている。こうした環境では、従来の薬物の危険性や違法性を呼びかける教育に加えて、薬物の誘惑・危険性に対して的確に判断し行動する力を高める教育が必要となる。

医薬品の本来の使用目的が「治療、予防」であること、適正使用には多くのルールがあることを正しく理解することにより、薬物による誘惑に対する判断力を高めることができる。「化学物質による健康増進、能力向上、快楽等の誘い」に対する違和感「変だな」感じる能力を高めることが重要である。

さらに、自己肯定感、自分がかけがえのない存在であること、を育む指導が必要である。「自己のすばらしさ」「自分の夢」「自分を高める友達、親、先生」を認識させることは、「大切な自分を壊さないために薬物乱用はしない!」という強い意志を育む。

「脳の構造とその素晴らしさ/人のすばらしさ」を授業に組み込むことは、小・中・高等学校生の自己肯定感を高め、さらにはそれが壊れた時の恐ろしさを理解させるのに有効であることを感じている。

最近、中・高校生では、医薬品の薬物乱用である「薬物乱用頭痛」なども問題になっている。向精神薬の乱用も今後大きな社会問題になる危険性がある。これらには医薬品の使用に関する正しい知識、判断力が必須である。

青少年のための健康教育には、喫煙、飲酒、薬物乱用等の危険性、医薬品の適正使用等が含まれるが、これらは当然相互に関連し合っている。個々の項目について指導するとともに、これらを総合的に判断し、行動できる能力を育成することが重要となる。健康教育の根幹には「自己を大切に思う気持ち」が重要であることは言うまでもない。

青少年の健康教育には、学校における教員による指導に加え、地域の医師・薬剤師等がこうした教育を積極的に参画し、青少年さらには保護者、社会に対して健康教育の重要性を伝えていくことの必要性がますます高まってきていると考える。