日本医師会が市販の「PCR検査キット」に懸念を表明 背景に検査を受けにくい現状が

 日本医師会は、楽天が法人向けに販売しているPCR検査キットに対し、「リスクが高いと考えざるをえない」と強い懸念を示した。
 日本では、PCR検査が十分に受けられないという現状もあり、検査の拡充に向けた動きが活発になっている。
検体の採取は専門家が正確に行うことが必要

 楽天が4月20日に法人向けに販売を開始した「新型コロナウイルスPCR検査キット」は、楽天が出資するジェネシスヘルスケアが、医療法人社団創世会の協力を受けて開発したもの。

 このキットでは、新型コロナウイルスに特徴的なRNA配列が含まれているかを判定する。利用者が鼻やのどの粘膜から採取した検体を容器に密閉。ジェネシスヘルスケア社が回収し、3日以内に結果がわかる。定価は1万4,900円(税込)。

 日本医師会は、このPCR検査キットについて、検査は専門家が正確に行うことが必要で、「自ら鼻の奥を拭って検体を採取するのはリスクが高い」と強い懸念を示した。

 その具体的な問題点として、(1)検体採取の際、周囲に感染が拡大する危険性がある、(2)検体採取は正確に行われる必要があり、不正確であれば結果は信用できない、(3)偽陰性で職場に出た場合、周囲に感染を拡大させる、(4)結果を医療機関に持って来られても対応は困難である――ことを挙げている。

 また、4月22日に開催された政府の新型コロナウイルス感染症対策専門家会議も、同検査キットに対し問題意識が示されたことを紹介し、「企業が同キットを購入し検査を実施した場合は、混乱をきたす可能性がある」ことを強調。

 PCR検査は精度をしっかりと管理した上で幅広く行うことが重要で、「医師が必要と認めたケースについてしっかり検査ができることが大事」と述べている。

医師が必要と認めた場合にすぐ検査できる体制構築を

 ただ、現状では医師が必要だと判断しても、PCR検査の実施につなげるのが困難な実態もある。

 日本医師会も、「PCR検査を十分に受けられないという今の検査体制を早く改善する必要がある」と指摘。

 楽天は「この検査キットを用いたリスク判定は、診断や医療行為を行うものではありません。新型コロナウイルス感染症について相談・受診すべき目安として挙げている特定の症状は出ていないものの、不安を感じられる方を対象としています」と述べている。

 米国でも、米国食品医薬品局(FDA)が4月21日に、初めてコロナウイルスについての家庭用検査キットを緊急に承認した。

 ただし、米国の検査キットは、審査当局が医療機器としての承認をしており、事前に医師の許可が課され、購入前にネット上で購入資格があるかどうかが調査される。

 日本では、新型コロナウイルス感染症に対するPCR検査の実施数が少ないことが問題になっている。

 これを解決しようと、地域の医師会などが運営する「検査センター」の運営が始められている。東京で20ヵ所以上、全国で100ヵ所程度が検査に取り組んでいる。


新型コロナウイルス感染症対策専門家会議 資料

日本医師会
新型コロナウイルス感染症対策専門家会議