高カロリー飲料やお菓子はなぜ危ないか メタボや糖尿病の原因糖質が判明
低カロリー甘味料を効果的に使うと、糖尿病や肥満を改善できると、専門家は指摘している。
フルクトースが糖尿病や肥満の犯人?
清涼飲料や菓子類などに含まれる「果糖(フルクトース)」が、食品のカロリーを高めるだけでなく、2型糖尿病や心血管疾患の発症リスクも高めているという研究が、医学誌「British Medical Journal」に発表された。
フルクトースは果物や野菜、フルーツジュース、ハチミツなど、さまざまな天然の食品に含まれているが、多くはコーラやジュースなどの清涼飲料や、お菓子やスイーツなどの加工食品から摂取されている。
世界のフルクトースの消費量は急速に増えている。米国人はフルクトースなどの糖質を多く摂取しており、4人に1人は1日に200kcal以上を摂取しており、5%は500kcal以上を摂取しているという。これは角砂糖(4g)に換算すると13~32個分に相当する。
そして、ジュースやコーラなど清涼飲料や菓子類などの甘味の強い加工食品の多くに「果糖ブドウ糖液糖」や「ブドウ糖果糖液糖」が甘味料として使われている。
コーンスターチ(トウモロコシから作られたデンプン)などから製造される「果糖ブドウ糖液糖」は、果糖(フルクトース)とブドウ糖(グルコース)を主成分とする異性化糖。工業的に安定して生産でき、価格が安いので、多くの食品に用いられている。
関連情報
加工食品を利用するときは
栄養成分表示を見ることが大切
ごはんやパン、穀類、いも、カボチャなどの野菜に含まれる炭水化物が複合糖質であるのに対し、フルクトースやグルコースは吸収されやすい単糖類だ。フルクトースは糖の中ではもっとも甘味が強く、多量を摂り続けると体重増加や肥満につながりやすい。
フルクトースは、ジュースや菓子などに含まれるコーンシロップ(果糖ブドウ糖液糖)が主な摂取源で、フルクトースを単体で摂取することはほとんどない。これらの高カロリーの加工食品の多くは、栄養的に貧しく、血糖値に有害な影響をもたらすとしている。
「消費者は栄養成分表示を見ないと、どの食品にフルクトースが含まれているかを知ることができません」と、カナダ・トロントにあるセント マイケルズ病院の臨床栄養センターのジョン シーベンパイパー氏は言う。
米国などの食事ガイドラインは、甘い清涼飲料やお菓子などからフルクトースを摂り過ぎないよう推奨しているが、どの食品にフルクトースが含まれているかを判別するのは容易ではない。
「加工食品を利用するときには、栄養成分表示をよく見ることを習慣化するべきです。健康に良いと思われている野菜ジュースやフルーツジュースなどにも、意外に糖類が多く添加されている例があります」と、シーベンパイパー氏は指摘する。
フルクトースが満腹感をもたらすことはない
シーベンパイパー氏らはトロント大学と協力して、フルクトースが血糖値の変動にどのような影響を及ぼすかを調べた155件の研究を解析した。その結果、フルクトースの摂り過ぎは、HbA1c値の上昇、空腹時血糖値や空腹時インスリン値の上昇につながることを確かめた。
フルクトースは、ほとんどが肝臓で代謝されるため直接には血糖を上げないが、肝臓で中性脂肪などに変換され、余分なものが脂肪として貯蓄される。フルクトースなどの糖類が含まれるコーラなどの清涼飲料を1日1回以上摂取すると、体重増加や肥満につながり、2型糖尿病のリスクが上昇することが、多くの研究で確かめられている。
フルクトースの含まれる高カロリーの清涼飲料は、それ自体が満腹感をもたらすことはなく、食事のカロリー摂取量が減ることはない。結果として体重増加を引き起こしやすい。
果物が糖尿病を引き起こすことは少ない
意外なことに、フルクトースは果物にも含まれるが、果物それ自体が2型糖尿病や肥満を引き起こすことは少ないことも判明した。
フルクトースを含む果物は、それらが過剰なカロリーを供給するのでないかぎり、血糖コントロールには有害な影響を及ぼさないという。
果物には果糖のほかに、食物繊維やビタミン、ポリフェノールなど、体にとって好ましい栄養成分も多く含まれる。
ただし、「果物は太らない」と思っていると、食べ過ぎにつながるので注意が必要だ。
たとえば、オレンジ100gのエネルギーは39kcal、炭水化物が9.8g(単糖当量7.1g)が含まれる。パイナップル100gは53kcalで、炭水化物は13.7g(単糖当量12.6g)。ブドウ100gは64kcalで、炭水化物は16.9g(単糖当量17.0g)含まれる。
「食品に糖類がどれだけ含まれるかを知り、消費者が賢くなることが大切です」と、シーベンパイパー氏は言う。
低カロリー甘味料は代替策になる
高カロリーの清涼飲料やお菓子などの加工食品は、2型糖尿病や肥満のリスクを上昇させるが、低カロリー甘味料はひとつの解決策となるという科学的研究の成果が、英国で11月に開催された「国際甘味料協会(ISA)会議」で発表された。
「スクロース(砂糖)の替わりに用いる低カロリー甘味料は、糖尿病や肥満のある人も安心して利用できるものです。低カロリー甘味料は食事のカロリーのコントロールや、体重のコントロールに有効です」と、専門家は述べている。
「低カロリー甘味料は、食事による過剰なカロリー摂取を減らし体重減少に役立つことを示した研究は多い。低カロリー甘味料により食事の総合的な質を高めることができます」と、米国のワシントン大学公衆衛生栄養センター所長であるアダム ドレヴノフスキ教授は言う。
トロント大学のジョン シーベンパイパー助教授は、「低カロリー甘味料それ自体が減量をもたらすことはありませんが、高カロリーの糖類に置き換えることで、食事のカロリー摂取量を長期にわたり調整できることが確かめられています」と指摘。
低カロリー甘味料は血糖値を上昇させない
メキシコのマリスト大学臨床内分泌学部のヒューゴ ラヴィアダ モリナ教授は、低カロリー甘味料を糖尿病患者の食事のコントロールに活用した例を紹介。「低カロリー甘味料は血糖値を上昇させません。糖尿病患者の血糖コントロールの補助として役立てる戦略は有効です」と言う。
英国のレディング大学のイアン ローランド教授は、低カロリー甘味料が腸内細菌叢にもらたす影響について言及。
「最近の研究では、腸内細菌叢がインスリン感受性に影響をもたらすことが分かってきました。低カロリー甘味料の多くは消化されずに胃腸管を通過します。甘味料が腸に到達して腸内細菌に遭遇し、腸内細菌のバランスを変化させるのではないかという懸念がありました」と説明している。
「しかし最新の研究では、低カロリー甘味料は、日常的な使用量であれば、腸内細菌叢に全体的に影響しないことが、科学的に確かめられています」と、ローランド教授は言う。
低カロリー甘味料の安全性は確認されている
低カロリー甘味料の安全性は、各国の食品安全当局によって確かめられている。国際連合食糧農業機関(FAO)、世界保健機関(WHO)の食品添加物専門家委員会(JECFA)などが、低カロリー甘味料の安全性を繰り返し確認していることを専門家は指摘。
「現在の食品や飲料の基準で承認されている摂取量であれば、低カロリー甘味料が安全であることは確認されています。1日の摂取許容量(ADI)を守ることが大切です」と、ミシガン州立大学のレベッカ ロペス-ガルシア氏は言う。
英国のブリストル大学生物心理学部のピーター ロジャース教授は、「食事の摂取カロリーをコントロールするために、低カロリー甘味料は有効なツールになります。世界的に肥満が爆発的に増えている現在、低カロリー甘味料を有効に活用することが、公衆衛生上の問題を解決するひとつの方法になります」と強調している。
Food sources of fructose-containing sugars and glycaemic control: systematic review and meta-analysis of controlled intervention studies(British Medical Journal 2018年11月21日)
Low calorie sweeteners can help in sugar reduction recommendations according to experts(国際甘味料協会 2018年11月6日)
Making Healthy Food Choices(米国糖尿病学会)