【新型コロナ】10~24歳の女児・女性の自殺が増加 他人との接触が減り精神的影響を受けている可能性
社会的基盤が弱い20~30代女性が、失業などによる経済的影響を受けやすいことや、周囲の人との関係性を重んじる女児・女性の方が、コロナ禍により他人との接触が減少したことにより、精神的影響を受けている可能性を推察している。
「自殺を予防するためには、男女で異なるアプローチが新たに必要」と、研究者は指摘している。
女性や若者の自殺者数の増加傾向を懸念
コロナ禍で、10~24歳の女児・女性で顕著に自殺数が増加していることを確認したと、横浜市立大学が発表した。
2020年にコロナ禍が始まり、女性や若者の自殺者数が増加傾向にあることが社会的に懸念されている。
研究グループは2022年3月に、コロナ禍による自殺の増加について、20~30代の若年女性でとくに顕著という調査結果を発表。その要因として、社会的基盤が弱い20~30代女性が失業などによる経済的影響を受けやすいためではないかと推察していた。
研究グループは今回、日本の厚生労働省から提供された死因別死亡数のデータを使用し、2012年7月~2022年6月までの10年間のデータを解析。
これは死亡診断書にもとづくデータベースで、日本国内のすべての死亡者をカバーしている。対象期間の10年間で、男児・男性9,428人、女児・女性3,835人の死因が自殺と報告された。
男女別に10~14歳、15~19歳、20~24歳の3つの年齢カテゴリーごとに、6ヵ月ごとの自殺者数をカウントした。パンデミック期(コロナ禍)と非パンデミック期(コロナ禍以前)を比べるために、Mann-Whitney検定によるBonferroni補正後のP値0.05で統計的有意性を判断した。
その結果、男性では、パンデミック前後で有意な変化はみられなかったが、女性の自殺死亡は、パンデミック時代に増加し、10~14歳、15~19歳、20~24歳のいずれの年齢階層でも、統計的有意性(P<0.05)が観察された。
10~14歳、15~19歳、20~24歳のいずれの年齢階層でも上昇
コロナ禍の自殺増加 失業などによる経済的影響だけではない
就業年齢以下である10代前半でも女児・女性で自殺が増加していることが確認できたことから、研究グループは、女児・女性の自殺増加は、本人の失業以外の理由によることが想定されるとしている。
一般に、女性は自殺企図(完遂しない自殺)が多く、男性は(完遂した)自殺が女性の2倍多いなど、自殺に関連する男女差があることが知られている。
「周囲の人との関係性を重んじる女児・女性の方が、コロナ禍により他人との接触が減少したことにより精神的影響を受けている可能性があると推察されます」と、研究グループでは述べている。
また、「女児・女性は家庭内暴力・虐待の対象になりやすいことも指摘されており、新型コロナ禍では自宅の滞在期間が長くなったことなどにより、その影響が顕在化した可能性も考えられます」としている。
関連情報
自殺予防は男女で異なるアプローチが必要
研究は、横浜市立大学附属病院化学療法センターの堀田信之センター長と慶應義塾大学医学部精神・神経科学教室の森口翔共同研究員の研究グループによるもの。研究成果は、「Lancet Psychiatry」に掲載された。
「近年の自殺者数の増加は社会全体での問題となっており、早急な対策が必要です。10代、20代の若者での自殺を予防するためには、感染対策や経済政策などだけではなく、男女で異なるアプローチが新たに必要ではないかと考えられます」と、研究グループでは述べている。
横浜市立大学附属病院化学療法センター
慶應義塾大学医学部精神・神経科学教室
COVID-19, young people, and suicidal behaviour (Lancet Psychiatry 2023年6月22日)
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