夏の外遊びでは「首を冷却」すれば子供が活発に活動できる 子供の運動習慣は大人になってからも影響
子供の夏の外遊びでは、首を継続的に冷やすことで、子供が屋外でより活発に活動できることが、順天堂大学などの研究で示された。
冷却効果のあるシートを用いて首を冷やした子供は、3メッツ以上の活発な身体活動をする時間が増えた。
子供の頃の運動習慣は、成長して成人になってからも健康に影響する。「子供のうちから体を動かす環境を整えることは、大人になってからウェルビーイング(心身の健康)につながると考えられます」と、研究者は述べている。
子供も運動不足 暑い夏の身体活動の低下を懸念
子供の体力向上と健康増進を推進するために、日常的に体を動かすことは重要だ。世界保健機関(WHO)が策定した「身体活動および座位行動に関するガイドライン」では、5~17歳の子供は、中・高強度の身体活動を1日に60分以上行うことが推奨されている。
子供が習慣的に体を動かすことで得られる健康利益として、確かな根拠があるものだけでも、次の5点が示されている。
(2) 適正体重を維持できる[3~17歳]
(3) 心肺機能や筋機能が改善する[6~17歳]
(4) 心血管系代謝の健康が改善する[6~17歳]
(5) 認知機能[学力、実行機能、処理速度、記憶]が改善する[6~17歳]
しかし、時代の変化にともない、子供が体を自由に動かしにくい社会環境になり、とくに夏季には身体活動量が低下しやすいことが、子供を対象とした研究により示されている。
とくに日本でも気候変動の影響により、4月の平均気温は、統計をとりあじめてからもっとも高い値になった。この先、6月から8月も高温傾向が続き、湿度も高くなり、蒸し暑さが増すと予想されている。今後もさらに夏季の身体活動量の低下が懸念されている。
首を冷却すると子供の身体活動量を高められる
そこで順天堂大学と花王の研究グループは、夏に子供が健全に身体を動かすための方策として、外遊びの際に首を冷却することによる影響を検証した。
2022年8月に、小学1〜3年生26人(男児 16人、女児 10人)を対象に、暑さ指数(WBGT)が25以上31未満の4日間、屋外で40分間(前半20分・休憩5分・後半20分)の自由遊びの時間を設けた。
参加者を、冷却効果のあるシートを用いて首を冷却するグループと、冷却しないグループに分け、全員の腰部に加速度計を装着してもらい、自由遊び中の身体活動量を測定した。
その結果、自由遊びの前半では、首を冷却したグループの方が、冷却しなかったグループに比べて、中高強度の身体活動の時間が長いことが確認された。中高強度の活動時間が長い分、低強度の身体活動の時間は短かったことも分かった。
中高強度の活動は、3メッツ(Mets)以上の強度の身体活動で、ウォーキングなど、息がはずむ程度以上の運動が相当する。
なお冷却シートは、冷却液を染み込ませた不織布を、動いても首の肌にふれるように加工したもので、自由遊びの時間には、参加した子供の活動の観察、鼓膜温、心拍数の測定を行い、安全に遊べていることを確認した。
子供の頃の運動習慣は大人になってからもウェルビーイングに影響
研究は、順天堂大学大学院スポーツ健康科学研究科の鈴木宏哉先任准教授らの研究グループが、花王スキンケア研究所と共同で行ったもの。研究成果は、昨年11月に横浜で開催されたて第34回日本臨床スポーツ医学会学術集会で発表された。
「夏季の外遊びでは、熱中症に配慮した条件下で、首を冷却した子供の方が、中高強度の身体活動の時間が長かったことが分かりました。夏季でも、体の一部を冷却することで、子供はより活発に活動できるようになる可能性があります」と、研究者は述べている。
「大人が子供の体を動かす環境を整えていくことは、次世代の大人のウェルビーイングを育てることにつながると考えられます。今後も、子供の体力向上や健康増進に寄与する研究・情報発信を進めていきます。」としている。
順天堂大学大学院スポーツ健康科学研究科
WHO guidelines on physical activity and sedentary behaviour (世界保健機関)
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