良い睡眠をとれていないと肥満やメタボのリスクが上昇 【睡眠を改善する3つの方法】
睡眠を十分にとれていないと、肥満のリスクが高くなることが明らかになった。
とくに生活リズムが乱れていて、十分な睡眠をとれていない人は、健康を損なうリスクが上昇する。
良い睡眠をとることで、食事や運動などの生活スタイルも改善しやすくなることも示されている。
睡眠を改善するための、3つの方法をご紹介する。
睡眠リズムが乱れると肥満や過体重になりやすい
睡眠を含めた生活リズムが乱れている人は、肥満や過体重になりやすいことが分かった。
米オレゴン健康科学大学の研究グループは、体格指数(BMI)が25以上の太りすぎや肥満の男女30人を対象に、7日間の睡眠を記録してもらった。唾液サンプルを採取し、睡眠ホルモンであるメラトニンの分泌についても調べた。
メラトニンは、毎日の睡眠やホルモン分泌などの概日リズム(サーカディアンリズム)の調節に関わっている。一般的に、メラトニンの分泌は、昼間に低く夜間に高くなる日内変動を示す。
夜になると自然にメラトニンは増え、眠りを誘うが、そうした眠りの信号を無視した生活をしている人は、肥満になりやすいことが調査では分かった。
とくに生活リズムが乱れていて、十分な睡眠をとれていない男性は、内臓脂肪が多く、中性脂肪の値も高く、メタボリックシンドロームのリスクが高かった。
「メラトニンの分泌に合わせた、睡眠と覚醒のリズムが規則正しい生活をしている人は、肥満のリスクが少なく健康である傾向があることも分かりました」と、同大学の労働衛生科学研究所のアンドリュー マクヒル氏は言う。
「生活リズムを整えることで、睡眠を改善できる可能性があります。良い睡眠習慣を身につけることが重要です」としている。
良い睡眠をとれていると食事や運動を改善しやすい
良い睡眠をとることで、食事や運動などの生活スタイルも改善しやすくなることが、米国心臓学会(AHA)が発表した別の研究で示されている。
研究グループは、12ヵ月減量プログラムに参加し、体重管理に取り組んでいる平均年齢50歳の成人125人を対象に調査をした。
その結果、良い睡眠をとれている人は最初の6ヵ月間で、食事のカロリー摂取量を減らし、より体を活発に動かしており、生活スタイルが健康的である傾向がみられた。
「1晩に7~8時間眠り、起床時間を規則正しくし、リフレッシュした状態で目覚め、日中は活発に活動することは、食事や運動などの生活スタイルを改善するためにも有用である可能性があります」と、ピッツバーグ大学の健康・人間発達学部のクリストファー クライン氏は言う。
AHAによると、良い睡眠をとることは、より日中に活動的になり、健康的な体重を維持し、コレステロールや血糖、血圧の値をより低く管理することと関連している。
睡眠を改善する方法1:スマホをベッドの近くに置かない
ベッドのなかでスマホを見ると睡眠が妨げられる
それでは、睡眠を改善するために、どんな方法が効果があるだろうか?
就寝の1~2時間前に、スマートフォンやタブレット、パソコンなどの画面を見ると、眠りにつくのが遅くなり、睡眠の質も低下すると考えられているが、とくにそうしたスクリーンタイムは、とくに就寝後に悪影響をもたらすことが明らかになった。
「ベッドに入ってからスマートフォンなどの画面を見ると、睡眠が妨げられることが分かりました」と、ニュージーランドのオタゴ大学糖尿病・肥満研究センターのブラッドリー ブロスナン氏は述べている。
「そうしたデバイスをベッドのまわりに置かないようにして、ベッドのなかでは使用しないようにすると、睡眠を改善できる可能性があります」としている。
研究グループは、11~14歳の若年者85人を対象に、胸にボディカメラを装着してもらい、就寝の3時間前から就寝後の行動を1週間にわたり記録した。
その結果、若年者の99%が就寝前の2時間以内にスクリーンを使用し、半数以上が就寝後にもスクリーンを使用していた。とくに就寝後にもスマホやタブレットを見ていた人は、睡眠が妨げられ、睡眠時間も短いことが分かった。
睡眠を改善する方法2:眠る前に軽い運動をする
座ったままできる自重トレーニングがおすすめ
オタゴ大学の別の研究では、夜に体操やストレッチなどの軽い運動をすると、睡眠の質を向上できることが示された。
「日中に運動する習慣のある人は、睡眠の質が良い傾向があることは分かっていますが、今回の研究では夜に行う軽い運動にも、睡眠を改善する効果があることが示されました」と、同大学人間栄養学部のメレディス ペディ氏は言う。
研究グループは、座位時間の長い28人の男女を対象に、午後5時以降に、自分の体重を使って行う自重トレーニングを軽く行うことに2晩取り組んでもらった。
自重トレーニングには、座ったまま行うスクワット、ふくらはぎ上げ、脚を伸ばしたまま股関節を伸ばす立ち膝上げの3つの運動が含まれていた。
その結果、夜に3分間の軽めの運動を数回行った翌日は、睡眠時間が約30分長くなることが分かった。
「1日に座ったまま過ごす時間が長いと、不健康になりやすく、肥満や糖尿病のリスクも上昇することが分かっています」と、同学部のジェニファー ゲイル氏は言う。
「そうした人は、夜にシンプルな自重トレーニングを行うと、睡眠を改善することが示されました。そうした運動は、特別な器具や広いスペースを必要とせず、テレビを視ながらでも手軽に取り組めます」としている。
近所や家のなかを軽く歩いたり、ヨガやストレッチを行ったり、リビングルームでダンスをするといったことでも、同様の効果が得られる可能性があるとしている。
ただし、就寝の直前に激しい運動をすると、体温と心拍数が上昇して、睡眠の質が低下するおそれがあるので勧めていない。
睡眠を改善する方法3:休日の寝だめに効果がある場合も
寝すぎには注意が必要
寝だめ(補充睡眠)については、睡眠不足の解消に、ある程度の効果があることが分かってきた。
毎日を忙しく過ごしており、仕事のある平日は睡眠不足になり、週末にそれを補うために睡眠時間を多めにとっている人は多い。
週末に睡眠時間を増やして、睡眠不足を補っている人は、睡眠時間がもっとも短い人に比べて、心臓病を発症するリスクが20%低いことが、9万人以上を対象にした新しい調査で明らかになった。
研究は、欧州心臓病学会(ESC)が発表したもの。研究グループは、UKバイオバンク プロジェクトに参加した9万903人を14 年追跡したデータを解析し、週末の補充睡眠と心臓病の関連を調べた。
その結果、補充睡眠が多いグループでは、少ないグループに比べて、心臓病を発症する可能性が19%低いことが示された。なお、参加者の21.8%が睡眠不足と判定された。
「睡眠不足が慢性化している人では、休日に適切に寝だめをすることが、心臓病のリスク低下と関連している可能性があります」と、中国北京の国立心血管病センターのヤンジュン ソング氏は言う。
ただし、休日に補充睡眠をとりすぎると、社会的ジェットラグ(時差ぼけ)が起こる可能性もある。休日の睡眠時間が長すぎると、体内時計に狂いが生じ時差ぼけになり、日中に活動モードになれず、かえって疲れやすくなる場合もある。ほどほどにしておいた方が良さそうだ。
「週末に寝だめをすることが必ず良いというわけではありませんが、質の良い睡眠をとれるよう、ご自分の睡眠習慣を見直すことが大切です」としている。
睡眠対策 (厚生労働省)
健康づくりのための睡眠ガイド2023
Good sleep habits important for overweight adults, OHSU study suggests (オレゴン健康科学大学 2024年8月23日)
Circadian alignment, cardiometabolic disease, and sex specific differences in adults with overweight/obesity Get access Arrow (Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism 2024年8月20日)
Getting Good Sleep Could Add Years to Your Life: Having five low-risk sleep habits may have long-term benefits (米国心臓病学会 2023年2月23日)
A good night’s sleep may make it easier to stick to exercise and diet goals, study found (米国心臓学会 2023年3月3日)
Keep devices out of bed for better sleep – study (オタゴ大学 2024年9月4日)
Screen Use at Bedtime and Sleep Duration and Quality Among Youths (JAMA Pediatrics 2024年9月3日)
Evening activity for better sleep – Otago study (オタゴ大学 2024年7月17日)
Evening regular activity breaks extend subsequent free-living sleep time in healthy adults: a randomised crossover trial (BMJ Open Sport & Exercise Medicine 2024年7月16日)
Catching up on sleep on weekends may lower heart disease risk by up to 20% (欧州心臓病学会 2024年8月29日)
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