子供の肥満が世界で増加 過去30年で2倍に増えパンデミックに 子供たちと家族の健康な未来に向けた取り組みが必要

 子供の過体重と肥満が世界的に増えており、1990年以降に2倍に増えたことが明らかになった。

 アジアでも子供の肥満は増えており、5歳未満の過体重の子供のほぼ半数はアジアに集中していることなどが分かった。

 小児期の過体重と肥満は、成長してから高血圧、2型糖尿病、脂質異常症、メタボリックシンドロームなどの増加につながるおそれがあり深刻だ。

 「母子のための保健活動に取り組む専門職は協力して、世界中の子供たちと家族のより健康な未来に向けた取り組みを開始する必要があります」と、研究者は指摘している。

子供の肥満が世界で増加 過去30年で2倍に

 子供の過体重と肥満が世界的に増えており、対策をしないでいると、将来に過体重や肥満の成人が爆発的に増える可能性があるという調査結果を、米国のフロリダアトランティック大学などが発表した。

 「子供の過体重や肥満は、1990年以降はすべての大陸で急増しており、罹患率はほぼ2倍に増えたことが分かりました。子供の過体重や肥満の増加は、もはやパンデミックと言える状況になっています」と、同大学医学部で予防医学を研究しているチャールズ ヘネケンス教授は言う。

 小児期の過体重と肥満は、成長してから高血圧、2型糖尿病、脂質異常症、メタボリックシンドロームなどの増加につながるおそれがあり深刻だ。

 これらの健康障害は成人にとって、心臓病、脳卒中、肝臓病、腎臓病、閉塞性睡眠時無呼吸症、関節炎、がんなどのリスクの上昇に影響する。

10~17歳の子供や若者の17%が肥満 肥満と栄養失調という二重の課題

 研究グループは今回、ユニセフの「小児と若年者の過体重と肥満の予防に関するプログラム」で2022~2023年に実施された、世界の4万人超の子供を対象とした調査のデータを解析した。

 その結果、米国では10~17歳の小児や若年者の17%が肥満であることが分かった。

 ギリシャ・イタリア・スペインを含む南ヨーロッパでも、10~15%の子供が肥満で、東ヨーロッパ諸国でも、肥満率はやや低いものの、急速に増加していることが明らかになった。

 アジアでも子供の肥満は増えており、5歳未満の過体重の子供のほぼ半数はアジアに集中していることなどが分かった。

 子供の栄養失調の問題も依然としてあり、多くの途上国は、子供の過体重・肥満と栄養失調という二重の課題に直面しているという。

子供の身体活動量を増やす対策が必要

 「多くの子供は、学校での体育の授業が減り、スマートフォンやタブレット、ゲームなどで遊ぶスクリーンタイムが長くなっており、運動ガイドラインで推奨されている運動量を満たせなくなっています」と、同大学人口健康・社会医学科のパナギオタ キサンタス教授は指摘する。

 「こうした座りっぱなしの生活スタイルが定着すると、不健康な食事、睡眠不足、身体活動の低下などが引き起こされ、過体重や肥満につながります」。

 「子供を競争させて身体活動を増やすのではなく、自主的に楽しく運動に取り組むことを奨励し、子供が必要な身体活動レベルを達成できるようにする必要があります」としている。

子供の健康的な食事や栄養のための教育プログラムも

 日常生活で身体活動量を増やすことに加えて、食事の管理も必要だ。過体重や肥満のある子供の多くは、糖質や脂肪を多く含む高カロリーの超加工食品や飲料をとりすぎている。

 「米国の平均的な子供の食事は、約70%が超加工食品で構成されているという調査結果があります」と、ヘネケンス教授は指摘する。

 「とくに未就学児の超加工食品の消費は世界中で増加しており、肥満に加えて免疫力の低下など、さまざまな問題を引き起こしています」としている。

 超加工食品がとのように子供の体重の増加に影響しているかについて、さらに詳しく調査する必要があるものの、成人でも超加工食品を多く食べる食事スタイルは過体重や肥満の増加と関連していることが明らかになっている。

 「超加工食品が多く消費されているのは学校であり、学校給食の栄養基準を強化することは、とくに低所得層の子供たちの肥満を減らすのに役立つ可能性があります」と、キサンタス教授は指摘する。

 「学校で提供される食事メニューから超加工食品を取り除き、より健康的な代替食品を増やすよう、学校給食の政策を見直し、健康的な食事に関する教育プログラムを充実させる必要があります」としている。

子供の肥満に対策するために多面的なアプローチを

 米国では、未就学児のBMI(体格指数)が85パーセンタイルを超えると過体重とみなされる。そうした子供が年齢を重ねると肥満になるリスクが高く、子供は成長すると太りすぎの問題を克服できるという見方は誤解でしかないことが浮き彫りになっている。

 米国小児科学会(AAP)は、子供の過体重と肥満の増加を阻止することを目的とした世界保健機関(WHO)のガイドラインを支持し、小児と若年者のための独自の推奨事項を発表した。

 「小児や若年者の肥満傾向に対して、臨床と公衆衛生の専門家は協力して、患者、家族、地域社会、政策立案者とともに分野を超えて、世界中の子供たちと家族のより健康な未来に向けた取り組みを開始する必要があります」と、ヘネケンス教授は言う。

 母子のための保健活動に取り組む専門職は、健康の社会的決定要因に取り組み、動機づけ面接などによる栄養・運動指導や、生活スタイルの改善など、利用可能なすべてのリソースを活用する必要がある。

 「最終的な目標は小児の過体重や肥満、メタボリックシンドロームの予防であり、多面的なアプローチが必要になりますが、完璧な管理を求めるあまり、子供の健康的な成長を阻むことはあるべきできありません」と付け加えている。

Alarming Surge: Global Crisis of Childhood Overweight and Obesity (フロリダアトランティック大学 2024年9月26日)
Navigating the Global Pandemic in Pediatric Overweight and Obesity: Emerging Challenges and Proposed Solutions (Maternal and Child Health Journal 2024年9月24日)
Prevention of Overweight and Obesity in Children and Adolescents (ユニセフ)


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