女性の健康のための検査・検診 日本の女性は知識不足 半数超の女性が「学校教育は不十分」と実感 「子宮の日」に調査

 「子宮の日」にあわせて行われた、女性の健康管理に関する調査で、子宮頸がん検査あるいは検診について、「知識がある」と回答した日本の女性は3割を下回り、HPV検査について、知識が「ない」という女性は7割以上に上った。

 「子宮頸がんはすべての女性が罹患する可能性があります。若い年代から正しい知識と検診習慣を身につけ、予防に努めることが大切です」と、専門家は指摘している。

日本の女性は子宮頸がん検査の知識が不足

 ロシュ・ダイアグノスティックスは4月の「子宮の日」にあわせて、日本を含むアジア太平洋の8つの国・地域で、25~50歳の女性3,473人を対象に女性の健康管理に関する調査を行った。

 調査の対象となった国・地域は、シンガポール、タイ、日本、韓国、ベトナム、インド、香港、台湾。

 子宮頸がん検査あるいは検診についての質問では、日本の女性は、「知識は豊富だと思う」「ある程度の知識があると思う」を合わせても26%と3割を下回り、アジア太平洋の国や地域でもっとも低い結果になった。「あまり知識はない」「全く知識はない」を合わせると7割以上になった。

 また、女性の健康に関連する検査あるいは検診、ならびに臨床検査あるいは検診についても、日本の女性は知識不足の割合が高い傾向にあり、「あまり知識はないと思う」「全く知識はないと思う」が7割を上回った。

HPV検査が受けられるようになったことを「理解している」女性は15%

 子宮頸がん検査あるいは検診、女性の健康に関連する検査あるいは検診、および臨床検査や検診について、「知識は豊富」「ある程度の知識がある」と回答した日本の女性に、これらのトピックについての知識はどのようにして得たか尋ねたところ、「インターネット(医療情報サイトなど)」(34%)、「医療従事者/かかりつけ医/産婦人科医」(29%)が上位に並び、「家族」「学校」は10%未満という結果になった。

 子宮頸がんの原因のほとんどは、HPV(ヒトパピローマウイルス)の感染だ。これまで子宮頸がん検診は、細胞診が用いられていたが、2024年4月より、厚生労働省の要件を満たす一部の自治体で、HPV検査を単独で住民検診で実施できるようになった。

 HPV検査の対象となるのは30歳以上の女性で、受診間隔は検診結果により異なるが、5年に1度行われることが多く、検診を受ける負担を減らしてある。

 このHPV検査について、知識が「あまりない」「全くない」という女性は7割以上に上った。認知が十分に進んでいない現状が浮き彫りになった。

女性の半数超は「学校教育は十分でなかった」と感じている

 学校で習った女性の健康についてのトピックについて日本の女性に尋ねたところ、「月経」が75%ともっとも多く、「性教育」47%、「性感染症」22%、「子宮や子宮頸がん」14%、「乳がん」12%、と続いた。一方、「健康診断についての情報(地方自治体のプログラム)」は7%程度にとどまった。

 さらに、「学校教育で性および生殖についての健康について十分な知識が提供され、自分で適切な判断ができるようにしてくれたか」という質問については、「全くそう思わない」「あまりそう思わない」が53%という結果になり、日本の女性の半数超は学校教育は十分でなかったと感じていることが示された。

子宮頸がんの検査を受けない理由は「恥ずかしい」「痛みをともなう」

 「健康上の懸念がある場合、最初に相談するのは誰ですか。あるいは、何から情報を得ようとしますか」と質問では、「医療従事者/かかりつけ医/産婦人科医」(32.9%)、「インターネット(医療情報サイトなど)」(26.2%)、といった回答が上位を占めた。

 また、子宮頸がんの検診受診意向を尋ねたところ、日本女性の34%が「子宮頸がんの検診を受けたことはなく、予約するつもりもない」と回答した。これまでに子宮頸がんの検査を受けたことがないと回答した女性にその理由を尋ねたところ、「恥ずかしい」「痛みをともなうことが不安」が上位に挙げられた。

HPVワクチンとHPV検査による子宮頸がん検診を受け、命を守り、健康な生活をおくることが大切

 今回の調査結果について、子宮頸がんを考える市民の会理事長で自治医科大学名誉教授の今野良先生は次のように述べている。

 子宮頸がんの検診を受けたことがあると回答した日本の女性は6割を上回るものの(6割という数字は高い傾向にあり、回答バイアスが生じている可能性もある)、子宮頸がん検診について「知識が豊富だと思う」「ある程度の知識があると思う」と回答した割合は全体の3割未満でした。
 このことから、正しい知識とともに自信をもって子宮頸がん検診を受けている女性は依然として少数であると推察されます。
 子宮頸がんは原因がウイルスであることが証明されており、HPVワクチンと検診によって予防できるがんです。2024年度から、がん検診に高感度なHPV検査単独法が導入され、HPV検査陰性(精検不要)と診断された30代から60代の方の受診間隔が5年となり、検診を受ける負担が減りました。
 このHPV検査について「聞いたことがある」と回答した人の割合はあわせて4割以上という結果になり、検診自体についての知識が「あまりない」「全くない」と回答した女性は7割以上に上ったことから、HPVワクチンとHPV検査について混同している可能性も考えられます。
 子宮頸がんはすべての女性が罹患する可能性があり、若い年代から正しい知識と検診習慣を身につけ、予防に努めてほしい。学校教育では、2016年からがん対策基本法のもと、「子宮頸がんはHPV感染が原因である」ことがカリキュラムに反映され、教えられています。
 今回の調査対象になった大人にも、さらなる教育・啓発が必要です。多くの女性が正しい知識とともにHPVワクチンとHPV検査による子宮頸がん検診を受け、命を守り、健康な生活をおくれることを望みます。

子宮頸けいがん検診について (国立がん研究センター がん情報サービス)

ウィメンズヘルス (ロシュ・ダイアグノスティックス)
健康についてのトピック 子宮頸がん (ロシュ・ダイアグノスティックス)
子宮頸がん検査の知識が「あまりない」「全くない」と回答した日本人女性は7割以上、APACの8つの国と地域中でもっとも知識が不足している結果に 女性の健康管理に関するAPAC8カ国・地域の意識調査 (ロシュ・ダイアグノスティックス2025年4月7日)


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