青少年の健康活動についてコロナ流行前〜後で社会経済格差を調査 琉球大学
琉球大学医学部の喜屋武享准教授と名桜大学の高倉実教授(琉球大学名誉教授)はこのほど、12歳から18歳までの青少年における、新型コロナウイルス流行前と流行中、そして流行後の健康行動を比較する研究を行った。
結果、身体活動において低所得層での実施不足が流行中に顕著化し、流行後も持続していたほか、朝食摂取については流行中にほぼ格差が消失したものの流行後に再燃するなど、社会経済格差の影響が明らかになった。
身体活動の不足や朝食摂取の不均衡は生活習慣病のリスクにも
社会経済状況や居住地域の違いによって健康状態に差が見られることを、一般的に「健康格差」と呼ぶ。研究者らによると、国内において健康格差の問題が注目され始めたのは比較的最近で、特に思春期を対象とした検証は限られていた。
また、これまでの研究で、社会経済状態が脆弱な家庭において、新型コロナウイルスのパンデミック中に身体活動習慣の低下や朝食摂取習慣の改善などの変化が起きることを明らかにしていたことから、今回、コロナ後の状況も踏まえて健康行動の格差やその影響について研究をすることにしたという。
研究で使用したのは、公益財団法人笹川スポーツ財団「全国子ども・若者スポーツライフ調査」(2019年、2021年、2023年)。同調査は子どもの運動やスポーツ活動の現状や問題点を明らかにするため、2年ごとの継続的な調査として実施されている。このうち12〜18歳の青少年を対象に、2019年調査は766人、2021年調査は725人、2023年調査は604人からの回答を元に研究を行った。
評価した健康行動は、1日60分以上の中高強度身体活動、2時間未満のスクリーンタイム、8〜10時間の睡眠、毎日の朝食摂取、そして3日に1回以上の排便習慣。
分析の結果、身体行動については、2019年には明確な格差は見られなかったものの、2021年には低所得層で基準を満たさない傾向が顕著となり、2023年もこの傾向が持続していた。一方、朝食摂取については2019年に大きな格差が見られたものの、2021年には一時的に解消。しかし2023年には再び拡大しており、格差が一度縮小した後に再燃する曲線的な変化を確認した。
そのほか、スクリーンタイムは低所得層で長時間化が進み、格差が拡大。睡眠と排便については、3つの時点を比較しても明確な格差は確認されなかった。
研究者らは、今後、これらの変化が長期的にどのような健康影響をもたらすのか、さらに検証する必要があると指摘。特に、身体活動の不足や朝食摂取の不均衡は学校生活への影響や成人後の生活習慣病リスクにもつながる可能性があることから、継続的で長期的な追跡研究が不可欠だとしている。
また社会経済的に不利な家庭の子どもたちが健康行動を維持できるよう、学校での支援体制強化や食習慣・運動習慣を支える地域資源へのアクセス改善なども検討が必要だと示唆。今後の継続的なモニタリングを通じて得られた知見を、エビデンスとして政策決定に反映させていくことが重要だと結んでいる。
全国3時点調査で判明 青少年の健康行動における社会経済格差 COVID-19収束後、朝食は再燃、身体活動は残存(琉球大学/2025年9月26日)
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