糖尿病の「自己管理支援アプリ」+「電子お薬手帳」 薬剤師がサポート

 東京大学大学院医学系研究科と日本調剤は、スマートフォンアプリと電子お薬手帳、そして薬剤師の3者を組み合わせた共同研究を、2016年12月より開始した。

東京大学と調剤薬局がアプリで疾病管理を支援

 東京大学大学院医学系研究科健康空間情報学講座が開発した「GlucoNote」は、2型糖尿病患者やその予備群を対象とした自己管理支援アプリ。それに、日本調剤の電子お薬手帳「お薬手帳プラス」を連携させ、これにかかりつけ薬剤師による対面サポートを組み合わせて、患者の疾病管理を支援する。

 研究題目は「自己管理支援アプリ(GlucoNote)の利用状況の改善(薬剤師業務との連携等)に関する研究」で、研究統括者は、東京大学大学院医学系研究科 健康空間情報学講座の特任准教授の脇嘉代氏。

 「GlucoNote」は健康空間情報学講座が開発した2型糖尿病および予備群の人を対象に自己管理支援と研究調査を目的としたアプリ。自宅で測定された体重・血圧・血糖値等のデータと生活習慣の関連性を検討し、2型糖尿病を改善するための適切な支援へつなげることを目的に開発された。

 2型糖尿病のコントロールに影響する運動、食事などの生活習慣と、糖尿病に関連する血糖値などの測定結果の記録をサポートする。研究調査が進めば、生活習慣が血糖値や血圧、体重にどう影響するかを詳しく解析できるようになるという。

【GlucoNoteでできること】
○血糖値の記録 入力すると自動的にグラフ化
○体重の記録  入力すると自動的にグラフ化
○血圧の記録  入力すると自動的にグラフ化
○歩数の記録  内蔵センサで自動的に歩数を記録
○食事の記録  写真からメニュー・カロリーを推定
○健診の記録  医療機関で測定された数値を一元管理
○測定値の判定 判定基準により食事・体重・歩数・血圧・血糖値の測定値を判定、コメントを表示

「顔の見えるアドバイス」で効果を検証

 一方、「お薬手帳プラス」は、薬の管理や各種健康管理をスマートフォンやパソコン上で管理することができる、日本調剤が開発した電子お薬手帳アプリ。登録用カードや手入力を必要とせずに、服薬情報を自動的に登録することができる「自動連携機能」や、スマートフォンで撮影した処方せん情報を薬局へ送信できる「処方せん送信機能」がある。

 「GlucoNote」は、糖尿病患者や予備群が主体的に利用できるアプリだが、継続的するには、具体的に顔の見える相手のアドバイスが必要だという。そこで、注目されたのが、患者との接触機会が多い薬剤師だ。糖尿病などの疾患の治療では、服薬が重要な役割を果たしており、そこでも薬剤師の役割は大きいという。

 「かかりつけ薬剤師」は、2016年4月から開始した、いわゆる「かかりつけ薬剤師制度」によって定義される薬剤師であり、厚生労働省の「患者のための薬局ビジョン」によると、「ICTを活用」した「服薬情報の一元的・継続的把握」が期待されている。また、「医療機関との連携」も同時に求められている。

 さらに、同年10月からは、「健康サポート薬局制度」が開始され、「かかりつけ薬剤師・薬局」機能に加えて、薬局は国民による主体的な健康の保持・増進を積極的に支援する「健康サポート機能」も発揮することが期待されている。

 同研究は、「GlucoNote」「お薬手帳プラス」「かかりつけ薬剤師」の3つの要素を組み合わせることで効果の検証を行う、世界でも類をみない新たな研究となる。

 先駆的な研究によって「パーソナルヘルスレコード」(PHR)の利活用と、薬剤師の介入に関する新たな知見が得られるとともに、新世代の薬局を構築する上で他に類をみない先進的ノウハウの取得が可能となるという。

GlucoNote(東京大学大学院医学系研究科 健康空間情報学講座)
電子お薬手帳「お薬手帳プラス」(日本調剤)

記事提供:日本医療・健康情報研究所