うつ病を「インスタグラム」の投稿写真から早期発見 70%の精度で特定

 気持ちがブルーになっているときは、ソーシャルメディアに投稿する画像もブルーの色調が強くなる。気持ちが暗くなっているときは、投稿画像も暗いグレーが強くなりがちになる――うつ傾向と身体的な言語や行動は一致しやすいことが精神医療の分野で知られているが、ソーシャルメディアではそれが明確にあらわれやすいという研究が発表された。

インスタグラムの写真からうつ病やメンタル不調を早期発見

 「インスタグラム」は、写真などを共有するソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)の中でもユーザー数の多いサービスだ。そのインスタグラムに投稿された写真の中に、投稿者がうつ傾向があるかどうかを予測する有力な手掛かりがあることが新たな研究で示された。

 インスタグラムに投稿された写真を、コンピュータによる機械学習により解析したところ、うつ状態の検出の正確性は70%と高く、一般診療の医師による診断の42%を大きく上回った。この研究は、データ解析を専門とする科学誌「EPJ Data Science」オンライン版に発表された。

 「インスタグラムの投稿写真の解析は、うつ病やメンタル不調を早期発見する有力なスクリーニング方法となる可能性があります。うつ病を検出するアルゴリズムを開発すれば、うつ病の早期発見につながるかもしれません」と、研究を主導したバーモント大学のクリス ダンフォース教授(数学・自然科学)は言う。

 ダンフォース教授らは、インスタグラムの投稿画像や、過去3年間の精神疾患の既往について研究グループに情報提供することに同意したユーザー166人の投稿画像4万3,950点を解析した。コンピュータのプログラムを用いて、投稿写真の特徴からうつ病を予測するモデルを開発した。

 画像の明るさや色彩、陰影の状態について、これまでの心理学研究で確立された病識をともに解析した結果、166人のうち71人にうつ病の既往があったが、健康なユーザーの写真と比べてうつ病のユーザーの写真は青みが強く、明度や彩度は低い傾向がみられた。

 インスタグラムにはスマートフォンで撮影した画像をユーザーがフィルタで加工できる機能が付いているが、健康なユーザーはバレンシアのような暖色系の明るい色調に変えるフィルタを好む一方で、うつ病のユーザーはグレーやセピアの色調やモノトーンに変えるフィルタを好む傾向がみられた。

自殺の抑止などの効果にも期待

 「うつ病で苦しんだ経験のある人は、ありのままに色彩の少ない暗いレンズを通して世界を見ている傾向があることが示されました。コンピュータは、膨大なデータから微妙なパターンを読みだす作業を得意としています。今回の研究は予備的なものですが、SNSの投稿写真からうつ傾向を早期発見できる可能性があります」と、ハーバード大学のアンドリュー氏(心理学)は言う。

 画像解析からはもうひとつの傾向も読み取れた。うつ病の既往のあるユーザーは健康なユーザーと同様に、人を撮影した写真を多く投稿していたが、それらの写真では人が少なく写っていることが多く、自分を撮った写真でも顔が小さく写っていた。これは社会的な相互関係と自己承認の低下を示している可能性があるが、これを実証するにはさらに多くの研究が必要だという。

 「うつ病の診断は医師によって行われるべきですが、メンタルヘルスの早期チェックや、より適切な精神保健サービスを実現するために、新しい低コストのスクリーニングを提供する必要があります。その点で、今回の研究は期待できます」と、アンドリュー氏は述べている。

 今回の研究では、写真投稿の日付と写真の内容から、いつ頃からうつ傾向が始まったかを検出するプログラムを作成することにも成功した。研究者は「この方法は自殺の抑止などの効果も期待できるのではないか」としている。

When You’re Blue, So Are Your Instagram Photos(バーモント大学 2017年8月7日)

Instagram photos reveal predictive markers of depression(EPJ Data Science 2017年8月8日)

記事提供:日本医療・健康情報研究所