11月14日は「世界糖尿病デー」 2017年のテーマは「女性と糖尿病」

 「世界糖尿病デー」は、国際糖尿病連合(IDF)が中心となり、11月14日に開催される。170以上の国や地域の230以上の糖尿病協会などが参加し、10億人以上の糖尿病患者や医療従事者が、世界糖尿病デーに参加している。世界糖尿病デーの2017年のテーマは「女性と糖尿病」(Women And Diabetes)だ。

11月14日は「世界糖尿病デー」 今年のテーマは「女性と糖尿病」

 世界糖尿病デーは、糖尿病の脅威が世界的に拡大しているのを受け、世界規模で糖尿病に対する注意を喚起しようと、IDFと世界保健機関(WHO)によって1991年に開始され、2006年には国連の公式の日になった。

 11月14日は、1922年にチャールズ ベストとともにインスリンを発見したフレデリック バンティングの誕生日にあたる。インスリンの発見により、糖尿病治療は飛躍的な進歩をとげた。

 世界糖尿病デーの2017年のテーマは「女性と糖尿病」(Women And Diabetes)だ。世界糖尿病デーのシンボルである「ブルーサークル」は、世界的に増加を続ける糖尿病に対する認知を拡大し、一致団結して対策を進める必要性を呼び掛けるために掲げられる。日本でも、日本糖尿病学会、日本糖尿病協会が中心となり「世界糖尿病デー実行委員会」を設立、さまざまな活動を展開している。

世界の女性の10人に1人が糖尿病 糖尿病は女性の死因の第9位

 糖尿病とともに生きる女性は、世界に2017年現在で1億9,900万人以上に上り、2040年までに3億1,300万人に増加すると予測されている。
 糖尿病は女性の死因の第9位で、糖尿病が原因で亡くなる女性は毎年210万人に上る。2型糖尿病の女性は、糖尿病でない女性に比べ、冠状動脈性心疾患(CHD)を発症する危険性が10倍高く、多くの国で、女性が糖尿病の早期発見と診断、治療、費用対効果の高い糖尿病ケアを受けるのは困難な状況にある。

糖尿病の女性が適切なケアを受けられるよう世界規模で社会整備が必要

 キャンペーンでは、糖尿病のリスクのある女性が適正な医療サービスにアクセスできるようにするとともに、糖尿病とともに生きる女性が適切な治療を受け、医療の進歩を享受できるよう社会を整備することを求めている。

 糖尿病は自己管理が必要な病気なので、糖尿病教育も重要となる。糖尿病と診断されていない女性に対しても、糖尿病を予防するための情報を提供することが必要だ。糖尿病とともに生きるすべての女性が、糖尿病をより良くコントロールし、健康アウトカムを改善できるよう、IDFは世界中に呼び掛けている。

糖尿病と妊娠糖尿病(GDM)は早期発見し治療を開始することが重要

 女性の社会進出が世界的に目覚ましい一方で、家庭では伝統的な役割分担を期待されることが多く、女性が自らの健康に目を向けることが妨げられている。日本でも女性が健康診査を受診する割合は男性より低く、糖尿病医療へのアクセスに影響している。

 女性が検査を定期的にうけ、治療と自己管理を行うことで、母子ともに健康に生きられる。女性の2型糖尿病を予防するために、妊娠前から対策をはじめるべきだ。子供の乳児期と成長期の栄養状態についても配慮する必要がある。世界の糖尿病人口の4分の3は途上国に集中しており、糖尿病の女性の妊娠も多い。途上国でも医療の底上げが必要とされている。

子供の7人に1人は、母親の妊娠糖尿病(GDM)の影響を受けている

 妊娠糖尿病(GDM)は、妊娠中にはじめて発症する糖代謝異常だ。糖尿病と診断されるほど血糖値は高くないが、適切な治療を行わないでいると、母子ともに危険にさらされることになる。

 国際糖尿病連合(IDF)によると、世界の2,090万人の女性で、妊娠中に高血糖や耐糖能異常が発見された。これは出生数の16.2%に相当する。つまり、世界で生まれる子供の7人に1人は、母親の妊娠糖尿病の影響を受けている。

 女性の糖尿病と妊娠糖尿病を早期に発見し、適切なケアを行うことで、妊産婦死亡率を大きく下げられることは、さまざまな研究で実証されている。キャンペーンでは、糖尿病のあるすべての女性が、安全に妊娠・出産できるように、「計画妊娠」をプランニングできる医療機関を増やすべきだと呼びかけられている。

妊娠糖尿病を発症した女性の半数が5~10年以内に2型糖尿病を発症

 妊娠糖尿病を発症した女性のおよそ半数は、出産後に5~10年以内に2型糖尿病を発症している。2型糖尿病の70%は、健康的な生活スタイルによって予防が可能だ。

 1型糖尿病と2型糖尿病の女性は、事前に十分な計画をすれば妊娠・出産が可能で、母子ともに健康に生きることができる。しかし、現状はとくに途上国を中心に糖尿病の女性は危機にさらされている。

 糖尿病とともに生きる女性の5人に2人が生殖可能な年齢にあり、その数は6,000万人以上に上る。医療体制が十分に整っておらず、糖尿病の女性が妊娠・出産するのが困難な国は少なくない。しかし、現在は糖尿病の医療は発達しており、適切なコントロールすれば、糖尿病の女性は安全に妊娠でき、子供を元気に育てられるようになっている。

 また、女性は家庭で中心的な役割を担うことが多く、家族の健康を増進するために女性の力が必要とされている。いわば女性は家族の健康管理のゲートキーパーの役割を果たしている。女性が自分の健康について関心をもつことは、家族全体にとって大きなメリットとなる。

糖尿病に対する偏見をなくし適切な治療を受けられる体制づくりを

 「糖尿病は太った人や、生活スタイルが乱れている人が発症しやすい」と捉える人が少なくないが、これは間違った考え方だ。実際には、それほど肥満でなくとも、また食事や運動に問題がなくとも、また、小児や若者であっても糖尿病を発症する人が多い。

 ひどい場合には「糖尿病は男性が発症する病気だ」という間違った考え方をする人もいる。そうした偏見は女性に対して特に強く、女性の糖尿病の早期発見・治療を妨げる原因になっている。糖尿病と女性に対する偏見をなくし、適正な知識を広めることが必要だ。また、糖尿病や耐糖能異常は高齢になると発症するという理解は間違っている。高齢出産は先進国を中心に増えているが、妊娠糖尿病の半数は30歳未満の女性に起きている。

 しかし現状では、多くの女性が糖尿病について正しい知識をもっておらず、治療にもアクセスしていない。糖尿病のあるすべての女性が、糖尿病の十分な治療と、自己管理に必要な知識を得るために、医療機関にアクセスできるよう社会整備を進める必要がある。各国の医療体制は、女性のニーズを満たし、女性が抱えるプライオリティーに配慮しなければならない。

【世界糖尿病デーのポスター】
世界糖尿病デーのポスター

世界糖尿病デー(世界糖尿病デー実行委員会)
世界糖尿病デー(World Diabetes Day)
国際糖尿病連合(IDF)

記事提供:日本医療・健康情報研究所