「子供の糖尿病」は珍しくない時代に 対応できる教職員は7人に1人

 日本糖尿病協会とサノフィは、糖尿病患児のよりよい学校環境作りの支援を目的とした教職員向け訪問プログラム「KiDS Project」を、本格始動すると発表した。事前に行った実態調査によると、糖尿病患児に対して「適切な対応ができる」と回答した教職員は、現状では7人に1人(15.3%)にとどまるという。

教職員向け訪問プログラム「KiDS Project」を始動

 日本糖尿病協会とサノフィは、糖尿病をもつ子供のよりよい学校環境作りのサポート、青年期における2型糖尿病の予防への貢献、の2つを目的として、小・中学校教職員向け訪問プログラム「KiDS Project」を本格稼働し、開催校を募集する。

 糖尿病の正しい知識や、糖尿病患児が学校で直面している現状を教職員に分かりやすく伝えることで、糖尿病の正しい理解が促進され、糖尿病をもつ子供の自信につながる環境の醸成を目指すという。

「KiDS Project」の特徴

● 講師は糖尿病の専門医
 糖尿病に精通した専門医が、糖尿病に関する正しい知識を伝える。

● インスリンメンターによる体験談
 糖尿病患者が実際に直面した現状の問題など、体験談を紹介する。
 日本糖尿病協会は、2015年より患者が患者を支援するピアサポートの取り組みとして、インスリンメンター制度を展開している。
インスリンメンターは、自らの経験をもとに、後輩患児のサポートや社会への糖尿病啓発を行う。

● 充実した内容の情報ツール
 「教職員」「子供」「一般の保護者」「糖尿病の子を持つ保護者」それぞれの視点から糖尿病について学ぶことができるKiDS Projectオリジナルの「学校用糖尿病情報パック」をはじめ、さまざまな情報ツールを使用する。
 1型、2型それぞれの糖尿病の基礎知識はもちろんのこと、教職員として知っておいていただきたいことや、糖尿病を持つ子供の学校での管理に関するガイドラインをわかりやすく説明している。

● 日本全国の学校へ訪問する

小・中学校教職員向け訪問プログラム KiDS Projec(公益社団法人 日本糖尿病協会)

どの学校現場でも「子供の糖尿病」に直面する可能性がある

 糖尿病の子供の数は近年増加傾向にある。日本糖尿病協会およびサノフィは昨年、都内の中学校を対象にパイロットケースを実施し、「子供の糖尿病」について専門医や患者から学ぶ機会を設け、教職員より高く評価されたという。

 そこで今回は、小・中学校における「子供の糖尿病」の実態の理解を深めることを目的に、現役の小・中学校教職員400名を対象に「糖尿病患児の就学環境に関する実態調査」を実施した。

 その結果、どの学校現場でも「子供の糖尿病」に直面する可能性がある一方で、現状では、受け入れ経験の有無によって、「子供の糖尿病」に関する認知や理解度に大きな差があることが明らかになった。

 また、教職員は「子供の糖尿病」について学ぶ意欲を持っているものの、これまでに知識を得る場が少なかった現状も浮き彫りになった。

糖尿病患児の受け入れた経験がある小・中学校教職員は25.3%

 実態調査の主な調査結果は以下の通り――

1. 教職員の4人に1人が糖尿病患児の受け入れ経験あり-「子供の糖尿病」は珍しくない時代に-
 小・中学校教職員の25.3%が糖尿病患児を受け入れた経験があると回答。4人に1人が患児の受け入れを経験しており、今やどの学校現場においても「子供の糖尿病」に 直面する可能性があることが判明した。

2. 糖尿病患児に対して、適切な対応ができると回答したのは15.3%
 糖尿病患児に対して「適切な対応ができる」と回答したのは全体の15.3%。受け入れ経験がない教職員においてはわずか8%にとどまった。「糖尿病について困らない程度の知識を持っている」と回答したのは、患児の受け入れ経験がある教職員のうち58.4%、受け入れ経験のない教職員では21.1%だった。
 「子供の糖尿病」の認知・理解度は、患児受け入れ経験の有無によって大きな開きがあることが分かった。また、「1型糖尿病」と「2型糖尿病」の違いを十分に理解しているのは全体の24.8%にとどまった。
 糖尿病患児の受け入れ経験のある教職員の81.2%が「子供の糖尿病」に関する知識を身に付ける必要性を感じているのに対し、受け入れ経験のない教職員では42.8%と大きな差が生じている。

3. 糖尿病患児の受け入れ経験者の中には、周囲の理解不足などで悩むケースも
 糖尿病患児を受け入れた経験のある教職員のうち、「悩んだ経験がある」と回答したのは21.8%。具体的な事例としては、「周りの教職員・同僚が糖尿病に関する正確な知識や、患児への対応方法を知らなかったこと」がトップ。

4. 過去に「子供の糖尿病」について学ぶ機会があったのは全体の21.3%に留まるものの、79.5%がセミナー参加に対して前向きな意向
 糖尿病患児の受け入れ経験のある教職員の51.5%が過去に学ぶ機会があったと回答したのに対し、受け入れ経験のない教職員においては11%に留まった。
 実際に「子供の糖尿病」に関するセミナーが開催された場合、過去に患児を受け入れた経験のある教職員の94.1%、受け入れ経験のない教職員においても74.6%が「参加したい」と回答した。

 今回の調査結果を受け、日本糖尿病協会の清野裕理事長(関西電力病院総長)は「学校における糖尿病患児への適切なサポートがあれば、彼らは健常児と同じように学校生活を送ることができます。糖尿病の児童・生徒のすこやかな毎日のためには、学校そして教職員の皆さんが重要な役割を果たします。日本糖尿病協会では、先生方が糖尿病患児を受け持つ際に不安を持たれることのないよう、正しい情報の提供などを通じてお手伝いしたいと考えます」と述べている。

KiDS Project

 糖尿病の子供をサポートし、学校に通う子供たちに健康的なライフスタイルを啓発するため、国際糖尿病連合(IDF)と国際小児思春期糖尿病学会(ISPAD)、サノフィ・グループが2013年9月に「KiDS Project」を立ち上げた。

 日本では、日本糖尿病協会とサノフィが協同し、訪問プログラムと充実した情報資材を通して、糖尿病をもつ子供のよりよい学校環境をサポートすること、青年期における2型糖尿病の予防に貢献することを目的に活動している。

公益社団法人 日本糖尿病協会
サノフィ株式会社

記事提供:日本医療・健康情報研究所