三世代同居ではないシングルマザーの約9人に1人が「こころの不調」の可能性~国立成育医療研究センター調査
国立成育医療研究センター(東京都世田谷区、五十嵐隆理事長)の研究グループがこのほど、乳幼児を養育する母親の健康状態を世帯形態別に調査して分析。結果、1人で乳幼児を育てているシングルマザーの約9人に1人が「こころの不調」を抱えている可能性が明らかになった。
研究グループは社会から孤立した状態にある母親の支援には、積極的な働きかけが必要だと示唆している。
シングルマザーの健康状態や生活状況は、ふたり親世帯の母親と比べて悪い傾向にあることは海外の研究で明らかになっており、母親のこころの健康状態が子どもの成長に影響を及ぼすことも指摘されている。一方で日本ではシングルマザーの経済的困窮については報道などがあるものの、全国のデータを用いて健康状態や生活状況を分析した研究はこれまで行われてこなかった。
そのため同センター研究所、社会医学研究部の加藤承彦室長らの研究グループは厚生労働省による国民生活基礎調査(2016年)のデータを用いて分析に着手した。
具体的には、5歳以下の子どもがいる世帯をふたり親・ひとり親に分け、さらに三世代同居の有無で4群に分類。学歴や年齢などの社会経済状況、喫煙や飲酒などの生活習慣と共に、こころの健康状態やストレスや相談相手の有無などを比較し、シングルマザーの健康状態や生活の状況を明らかにした。
こころの健康状態については、K6尺度(うつ病や不安障害などの精神疾患をスクリーニングすることを目的に開発された6項目からなる尺度)を分析に使用。その結果、こころの不調の割合は、1人で乳幼児を養育しているシングルマザーの群では11%となり、他の3群に比べて高い傾向にあった。
同様に自身の健康状態について尋ねた質問では、「あまりよくない」や「よくない」を選んだ割合が16%、日常生活で悩みやストレスがある人で「相談相手がいない」と答えた割合が9%と他群に比べて高かった。
また、毎日喫煙や飲酒の習慣がある人の割合も、1人で乳幼児を養育しているシングルマザーが最も高く、睡眠時間も少ない傾向にあった。
これらの分析結果から、三世代同居ではないシングルマザーは孤立した状態で養育していることがうかがえ、研究グループは「さらなる自助努力を期待するのは、現実的ではない」としたうえで、養育者の喫煙やこころの不調が子どもの成長に好ましくないことも考慮すべきだと指摘。
行政がアウトリーチ(支援を必要としている人のところに出向いて働きかけること)する必要性を説いている。