市販薬の適切使用とヘルスリテラシーの関連を明らかに〜筑波大の研究グループ

 筑波大学の研究グループ(研究代表者:筑波⼤学医学医療系・⾇本祥⼀講師)がこのほど、薬局での市販薬購入者にアンケート調査を実施。

 その結果、ヘルスリテラシーの高い人ほど医薬品添付文書の理解度が高く、副作用の症状が出た際も相談行動を起こしやすいことが分かった。

 研究グループは、ヘルスリテラシー向上をうながすとともに、薬局スタッフが利用者に対して説明や注意事項の啓発などで、より積極的に介入する必要があるとしている。

販売者による積極的なコミュニケーションも大切

 医薬品の適切な利⽤には、⾃分の病状を理解したうえで、添付⽂書に記載の指⽰を守れるか、薬剤師の指⽰に適切に従えるか、といった「ヘルスリテラシー」が必要とされる。ヘルスリテラシーとは、人々の健康に関する知識を測定する指標として使われる概念のこと。

 国内では2017年からセルフメディケーション税制(特定の医薬品購入額の所得控除制度)が始まり、個人がスイッチ要指導医薬品及び一般用医薬品のうち、医療用から転用された医薬品を購入した際に、その購入費用について所得控除を受けられるようになった。

 これにより、不要な医療機関への受診や医療費が抑制されるメリットがある一方、医薬品の誤使用や乱用、処⽅薬との相互作⽤や副作⽤などが発生する恐れもあり、ヘルスリテラシーが問われると言える。

 一方、これまでに慢性疾患の患者については、代替医療(通常医療以外の治療)による副作用への適切な対処にヘルスリテラシーが重要であるとの報告があったが、市販薬利⽤者のヘルスリテラシーの状況と、添付文書理解能⼒や副作⽤出現時の対処能力について関連を明らかにした結果は国内ではなかった。

 そのため、同研究は2020年1月から2月、関東地方14カ所の薬局店舗で、市販薬を購入した20歳以上を対象にアンケート調査を実施。140人の回答データを解析した結果、ヘルスリテラシーが高い人ほど添付文書をよく理解し、副作用が発生したときは医療者へ相談するなど適切な対処につながっていることが分かった。

 ヘルスリテラシーの⾼低により、医薬品添付⽂書の理解度に差が生じる可能性があるため、市販薬を利用する際は医療従事者の助言を得ることが望ましいが、実際に薬局の薬剤師または登録販売者に相談をしたのは全体の12.9%にとどまった。

 そのため研究者らはセルフメディケーションの適正利⽤のためには、人々のヘルスリテラシー向上とともに、店舗での販売者(主に薬剤師や登録販売者)による積極的なコミュニケーションと情報提供を含めた⽀援が求められる、としている。


筑波大学「健康に関する知識が高いほど、市販薬を適切に使用できる」


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