子宮の日 もっと知ってほしい子宮頸がんワクチンのこと 予防啓発キャンペーンを展開
4月9日は、子宮頸がん予防を啓発するための「子宮(し・きゅう)の日」だ。
子宮頸がんの原因になるヒトパピローマウイルス(HPV)は、性的接触のある女性の50%以上が、一生に一度は感染すると言われている。
HPVの感染は、HPVワクチン接種で防ぐことができ、それにより子宮頸がんの原因の50~70%を防げる。HPVワクチン接種の「積極的勧奨」が再開されており、公費で受けることができる。
定期接種を知らなくて接種の機会を逃してしまった「誕生日が1997年4月2日~2008年4月1日の女性」が、2025年3月までであれば、無料で接種を受けられるキャッチアップ制度も実施されている(通常は10万円程度がかかる)。
HPVワクチンによる感染予防とあわせて、子宮頸がん検診も重要だ。
子宮頸がんは20代~30代の若い世代でも多い
4月9日は、子宮頸がん予防を啓発するための「子宮(し・きゅう)の日」。
子宮頸がんは、子宮の入り口である子宮頸部にできるがんで、日本では、毎年1万人以上が新たに子宮頸がんと診断され、年間約2,900人が亡くなっている。
また、子宮頸がんは、20代~30代の若い世代でも罹患する。早期に発見できれば、命や子宮を守ることができるが、就労や結婚、出産、子育てなど、女性にとって大きなライフイベントを迎える時期での発症率も高く、女性の人生に大きな影響をもたらしている。
「知ってください ヒトパピローマウイルス(HPV)と子宮頸がんのこと」を公開
子宮頸がんの主な原因は、ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染。子宮頸がんは、HPVワクチンと検診(細胞診、HPV検査)を組み合わせることで、撲滅が可能ながんとして世界的に認知されている。
実際には、多くの先進国で子宮頸がんに対策した結果、罹患率や死亡率は減少している。しかし日本では、HPVワクチン接種と子宮頸がん検診の対策が十分に普及していないことを背景に、罹患率と死亡率はともに増加が続いている。
とくにワクチンは、副反応への懸念から、積極的勧奨が2013年6月から2022年3月まで差し控えられ、接種率は1%程度まで低下していた。
そこで国立がん研究センターは、プロジェクトを立ち上げ、HPVに関連するがんの対策とその管理体制について、科学的根拠と諸外国の事例をまとめ、一般向けの分かりやすいリーフレットとして「知ってください ヒトパピローマウイルス(HPV)と子宮頸がんのこと」を公開している。
リーフレットの内容は、▼子宮頸がんってどんな病気なの?、▼子宮頸がんはワクチンで予防することができます、▼HPVワクチンの接種対象者とスケジュールについて、▼ワクチン接種後に起こりうる症状について、▼ワクチン接種だけでなく、予防のために検診が大事です、など。
子宮頸がん予防啓発キャンペーン「今できること、しなきゃ。」
製薬企業のMSDも、「子宮の日」にあわせて、子宮頸がん予防啓発キャンペーン「今できること、しなきゃ。」を展開している。
これにあわせて、同社の子宮頸がん予防情報サイトの名称を「もっと知りたい 子宮頸がん予防」に変更し、内容を大幅にリニューアルした。
同サイトでは、子宮頸がんの原因・予防・治療についての基本的な情報をQ&A形式で分かりやすく解説するとともに、子宮頸がんに関する用語集なども公開している。
「とくに10代~20代にかけては、勉強やクラブ活動、仕事、そしてプライベートでもやりたいことがたくさんあったり、若い方にとって”がん”は身近に感じることが少ないため、子宮頸がん予防をつい後回しにしている方も多いと考えられます」と、同社では述べている。
「今回、忙しい若い世代とそのご家族の方に、子宮頸がん予防は”今できること”であることを考えていただきたく、キャンペーンを実施することにいたしました」としている。
「大切な人/毎年10,000人以上・年間約2,900人が…」篇
HPVワクチンは子宮頸がんの予防でもっとも効果的
子宮頸がんを予防するために、もっとも効果的な方法は、男女がともにHPVワクチンの接種を受けることだと、スウェーデンのカロリンスカ研究所が発表した。
ワクチン接種を受ければ、HPVの感染を防ぐことができる。個人の免疫を高められるだけでなく、集団免疫も獲得でき、子宮頸がんの発生率を大きく低下できる。
「HPVはスウェーデンでも、もっとも一般的にみられる性感染症で、性的に活発な男女の多くが感染しています。しかし、スウェーデンはHPVワクチンの接種率が高く、発症率を低く抑えられています」と、同研究所の上級研究員であるヴィル ピメノフ氏は言う。
スウェーデンではHPVワクチンの接種は、当初は12歳前後の女子にのみが受けていたが、2020年以降は男子と女子の両方に提供されるようになったとしている。
「1992年~1994年に生まれた子供を対象とした追跡調査で、男の子と女の子の両方がワクチン接種を受けると、より強い集団免疫が得られることが示されました」と、ピメノフ氏は指摘している。
一定の年齢に達した女性は、がん検診(子宮頸がん、乳がん、大腸がんなど)を定期的に受けることも重要だとしている。
国立がん研究センターと国立国際医療研究センターの研究グループは、予防可能ながんによる経済的負担を推計することで、がん予防による経済効果がどの程度になるかを算出した。
PAF(人口寄与割合)は、特定のリスク要因の影響がなくなった場合に、その病気の発生や病気による死亡がどれだけ減らせるかをあらわした指標。
その結果、がん予防により軽減できる経済的負担は、1兆240億円(男性 6,738億円、女性 3,502億円)に上ることを明らかにした。
予防可能ながんの経済的負担は、男女ともに「胃がん」がもっとも多く(男性 1,393億円、女性 728億円)、次いで男性は「肺がん」(1,276億円)、女性は「子宮頸がん」(640億円)が多いことが分かった。子宮頸がんは、若年女性も罹患する疾患のため、労働損失が多い結果が示された。
がんによる経済的負担に男女間で大きな差はないことも分かった。その理由として、女性のがんのなかで経済的負担の多い乳がんや子宮頸がんは、働き盛りの世代での罹患が多いため、直接医療費だけでなく、労働損失も大きいことが影響しているとみられる。
男女ともに胃がんの経済的負担がもっとも多い
次いで男性は肺がん、女性は子宮頸がん・乳がんが多い
Gender-neutral HPV vaccination best at preventing cervical cancer (カロリンスカ研究所 2023年11月8日)
Harnessing the post-vaccination era: Do emerging HPV types represent a new threat? (Cell Host & Microbe 2023年11月8日)
国立研究開発法人 国立がん研究センター
国立研究開発法人 国立国際医療研究センター
Economic burden of cancer attributable to modifiable risk factors in Japan (Global Health & Medicine 2023年5月4日)
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