若い人の糖尿病が世界的に増加 日本人は糖尿病になりやすい体質をもっている 若いときから糖尿病の予防戦略が必要

 世界で若い人の糖尿病が増えている。2型糖尿病は、主に中高年の成人や高齢者が発症しやすいとみられていたが、若い人のあいたでも増加していることが示された。

 「若者の糖尿病は、今後40年間で増加すると予測しています。小児や10代の若年者を対象に、できるだけ早期から糖尿病の対策に取り組むことが重要です。また、若者の糖尿病を管理する必要性も高まっています」と、研究者は述べている。

 日本人は欧米人に比べると、摂取エネルギー量が少なく、肥満が少ないにもかかわらず、2型糖尿病の発症は多い。これは、日本人の多くが2型糖尿病になりやすい体質をもっているためと考えられる。

 米国では、若年者の2型糖尿病の危険因子を特定し、予防と治療を改善するための大規模研究を開始された。

若い人の糖尿病が増えている

 世界で若い人の糖尿病が増えている。2型糖尿病は、主に中高年の成人や高齢者が発症しやすいとみられていたが、若い人のあいたでも蔓延していることが示された。

 「ランセット糖尿病・内分泌学」に今年7月に掲載された論文には、世界の20〜39歳の若者の糖尿病の有病率は、2013年の2.9%から2021年には3.8%に増加したことが記されている。

 若年で2型糖尿病を発症した人は、年齢を重ねてから発症する人に比べ、血糖値を下げるインスリンが働きにくくなるインスリン抵抗性が多く、インスリンを分泌する膵β細胞の機能の低下が早く、合併症が早期に進行しやすいとしている。

 国際的な調査グループは、米国で30歳で2型糖尿病と診断された人は、糖尿病のない人に比べ、寿命が平均して14年短くなるという衝撃的な報告も発表している。

小児と若者の糖尿病は2060年までに70%増加

 米国疾病予防管理センター(CDC)の今年5月の発表でも、20歳未満の若者の2型糖尿病は増えていることが示された。

 現状の発症率の上昇傾向が続くと、小児と若者の2型糖尿病の症例数は2060年までに70%増加すると予測している。

 ただし、糖尿病の予防のための対策を行えば、2型糖尿病の年間発症率を2%減らすことは可能としている。予防対策を行えば、糖尿病の発症数を52万6,000人から29万4,000人に減らすことができるという。

 「若者の糖尿病は、今後40年間で増加すると予測しています。小児や10代の若年者を対象に、できるだけ早期から糖尿病の対策に取り組むことが重要です。また、若者の糖尿病を管理する必要性も高まっています」と、研究者は述べている。

 「世界中に蔓延している、塩分・脂肪・糖質を多く含む、高カロリーの超加工食品に過度に依存する生活スタイルを変えるなどして、対策する必要があります」としている。

日本人は糖尿病になりやすい体質をもっている

 日本でも、肥満傾向の子供の割合が増えているという調査結果を、文部科学省や国立成育医療研究センターが発表している。

 2型糖尿病の発症には、糖尿病のなりやすさを示す遺伝的因子と、不健康な食事や運動不足、ストレスなどの生活スタイルによる環境因子の両方が影響している。

 日本人は欧米人に比べると、摂取エネルギー量が少なく、肥満が少ないにもかかわらず、2型糖尿病の発症は多い。これは、日本人の多くが2型糖尿病になりやすい体質をもっているためと考えられる。

 糖尿病の発症には、体質も大きく関わっており、日本人の遺伝的な体質では、過剰に摂取されたカロリーをうまく処理できない傾向がある。そのため、少し食べすぎたり運動不足になり、少し太っただけでも、糖尿病リスクは高くなるとみられている。

8歳の頃にすでに糖尿病の初期兆候が

 英ブリストル大学の研究では、成人になると2型糖尿病にかかりやすくなる初期兆候は、8歳の子供の頃にすでにみられることが示されている。

 「2型糖尿病は高齢者に多い病気とみられていますが、その50年前のかなり初期の段階で、糖尿病のリスクはあらわれている可能性があります」と、同大学ポピュレーションヘルスサイエンス部のジョシュア ベル氏は言う。

 「できるだけ早期から生活スタイルを見直すなど対策をすることで、糖尿病の悪影響を減らすことができます」としている。

 研究グループは、4,761人の参加者を対象に長期追跡して、8歳・16歳・18歳・25歳のときに採取した血液サンプルから、2型糖尿病の遺伝的リスクスコアが代謝に与える影響を調査した。

【若年者の糖尿病】2型糖尿病は1型糖尿病よりも合併症が多い

若いときに2型糖尿病を発症すると合併症リスクが上昇

 2型糖尿病を若年のときに発症した人は、同時期に1型糖尿病を発症した人に比べて、糖尿病の合併症による負担が大幅に高いことが、米コロラド大学の別の研究で示されている。

 研究グループは、米国の若者の糖尿病を調べた「SEARCH研究」に参加した、1型糖尿病のある1,746人の若者と、2型糖尿病のある272人の若者を対象に追跡して調査した。

 その結果、10代の頃に2型糖尿病を発症した人の75%近くは、網膜症・腎臓病・神経障害・動脈硬化・高血圧など、糖尿病の合併症や併存疾患を少なくとも1つを発症したことが分かった。

 一方、早くから血糖管理を開始した1型糖尿病の人は、合併症などの発症は少なかった。


 1型糖尿病は、膵臓からインスリンがほとんど出なくなる(インスリン分泌低下)ことにより発症するタイプの糖尿病で、自分の細胞を誤って攻撃してしまう「自己免疫」が発症に関わっていると考えられている。

 1型糖尿病は、過食や運動不足などの生活スタイルが関わる2型糖尿病とは、原因や治療が大きく異なり、生きていくためにインスリンを注射などで補うことが必須になる。何歳でも発症する可能性はあるが、若年期に発症する人が多い。

 「糖尿病の合併症を予防するために、早い時期から糖尿病への対策を開始することが重要であることが示されました。将来に糖尿病がもたらす問題を減らすために、できるだけ早期から良好な管理を行う必要があります」と、同大学公衆衛生・疫学部のダナ ダベリア教授は述べている。

若年者の2型糖尿病の危険因子を解明
若い人の糖尿病の予防と治療を改善するための研究を開始

 米国国立衛生研究所(NIH)はこのほど、若年者の2型糖尿病の危険因子を特定し、予防と治療を改善するための大規模研究を開始したと発表した。

 2型糖尿病と診断される若者の数は、過去20年間で急増しており、今後もその傾向が続くと予想されているのを受けたもの。

 研究グループは、米国全土の研究施設で、2型糖尿病を発症するリスクがあるとみられる9~14歳の小児の参加者3,600人を募集する計画を立てている。

 1~2ヵ月の血糖値の平均が反映されるHbA1cの値が正常高値より高い小児や若年者を、多様な人種や民族、社会経済的に恵まれなかったり十分な医療を受けられない層も含め、長期にわたり追跡して調査する予定だ。

 「若者の2型糖尿病発症の生物・社会・環境の要因に対する理解を深め、中高年者の糖尿病と区別し、どの子供や若者が糖尿病のリスクが高いかを特定することで、より効果的で的を絞った予防および介入戦略ができるようになります」と、ケース ウェスタン リザーブ大学の小児内分泌科医であるローズ グビトシ クルーグ氏は述べている。

Alarming rise in young-onset type 2 diabetes (Lancet Diabetes & Endocrinology 2024年7月)
Life expectancy associated with different ages at diagnosis of type 2 diabetes in high-income countries: 23 million person-years of observation (Lancet Diabetes & Endocrinology 2024年10月)
Diabetes in Young People Is on the Rise (米国疾病予防管理センター 2024年5月15日)
Projections of Type 1 and Type 2 Diabetes Burden in the U.S. Population Aged <20 Years Through 2060: The SEARCH for Diabetes in Youth Study (Diabetes Care 2022年12月29日)
Signs of being prone to adult diabetes are already visible at age 8 years old (ブリストル大学 2020年6月19日)
Early Metabolic Features of Genetic Liability to Type 2 Diabetes: Cohort Study With Repeated Metabolomics Across Early Life (Diabetes Care 2020年4月28日)
Type 2 Diabetes Diagnosis in Youth Leads to Increased Health Complications (コロラド大学 2017年2月28日)
Association of Type 1 Diabetes vs Type 2 Diabetes Diagnosed During Childhood and Adolescence With Complications During Teenage Years and Young Adulthood (JAMA 2017年2月28日)
NIH launches large study to tackle type 2 diabetes in young people (米国国立衛生研究所 2024年10月9日)
学校保健統計調査 (文部科学省)


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