スマホで子どもの成長や発達のビッグデータを収集 世界初の育児研究

 国立成育医療研究センターとファーストアセントは、スマートフォンアプリ「パパっと育児@赤ちゃん手帳」を使い、世界的に前例のない、子どもの成長、発達、生活習慣の実態解明を目指した共同研究を開始すると発表した。

子どもの成長、発達、生活習慣のビックデータを解析

 研究では、リアルタイムで経時的に記録されたビッグデータを解析し、これまでほとんど知られてこなかった子どもの成長、発達、生活習慣の個人差やそのダイナミックな経時的変化を調査する。市民参加型の本研究では、育児に取り組む父親や母親の多数の参加を求めている。

 近年、スマートフォンやタブレットといった携帯用端末が普及し、生活や行動に関する様々なデータ(ライフログ)がリアルタイムに記録されるようになった。こうしたビッグデータは商業では広告や物流などにすでに利用されているが、医学研究への応用はまだ始まったばかりだ。

 一方で、子どもたちの健康状態を正しく知る上で、その実態を個人差の幅も含めて知ることは極めて重要だ。例えば、1ヵ月児の排便回数は「3日に1回」という子もいれば「1日に6回」という子もいて、個人差が大きいことが知られている。排便回数は栄養方法(母乳主体か人工乳主体か)により影響を受け、時間的にも変化してゆくことが経験的に知られているが、その詳しい実態は不明だ。

子どもたちの生活記録1億件以上を解析

 「パパっと育児@赤ちゃん手帳」は17万人以上が利用しているスマートフォン育児メモアプリで、入力データは1億件以上。ユーザーは睡眠、食事、排泄といった子どもたちのライフログを育児メモとして記録でき、1週間の生活パターンを知ったり、育児記録の電子書籍を作ったりすることができる。

 研究では、医学研究への利用に関して同意の得られた1億件以上のライフログデータをもとに特定の条件にもとづいた統計データを取り出し、国立成育医療研究センターで分析する。

 子どもたちの生活記録1億件以上から抽出した統計データを分析し、成長、発達、生活習慣の個人差や経時的変化、それぞれの因子の関係(例:睡眠時間と身長に関係はあるか?)を解明する。

 例えば「母乳栄養で育てられた1ヵ月の乳児の排便回数の分布(ヒストグラム)」「1ヵ月時の1日睡眠時間と1歳時の身長の二次元グラフ」といった条件で統計データを取り出せるという。

睡眠時間と背の伸び方に関係がある?

 乳幼児の実態に関する従来の調査として、厚生労働省が10年おきに行っているアンケート調査「乳幼児栄養調査」が代表的だ。排便回数を例にとると「お子さんの排便の頻度はどのくらいですか?」という問いに対し「ほぼ毎日排便がある」から「便秘の治療を行っている」までの6つの選択肢から選ぶ形式となっている。

 厚労省の調査で0ヵ月~6ヵ月未満の乳児について124人分のデータが調査されているが、多数のデータを集めることは難しく、個々の情報は保護者の記憶に頼るため、ある程度の不確かさが避けられない。

 今回の研究では1億件以上の発生源入力情報にもとづいており「1ヵ月児の排便回数」にまつわる統計値(平均値、ばらつき、分布など)を高精度に求めることができ、「1ヵ月児は授乳後何時間で排便しやすいか?」といったことも調査できる。

 「睡眠時間と背の伸び方に関係がある?」「発達のはやさには男女差がある?」「母乳と人工乳でどちらがよく眠る?」といった疑問を検証することもできるという。

 「収集した子どもたちの成長、発達、生活習慣の個人差や経時的変化に関するビッグデータを、育児不安の解消や病気の早期発見などに役立てたい」と、研究グループでは述べている。

 研究は、国立成育医療研究センター分子内分泌研究部基礎内分泌研究室の鳴海覚志室長らの研究グループによるもの。

国立成育医療研究センター
パパっと育児@赤ちゃん手帳

記事提供:日本医療・健康情報研究所