【睡眠健診】睡眠を見直し生活リズムを改善 健やかな発育・発達を 「子ども睡眠健診」プロジェクト
理化学研究所と東京大学は、全国の子供を対象とした「子ども睡眠健診」プロジェクトを開始すると発表した。
この「子ども睡眠健診」プロジェクトでは、児童・生徒(主に小中高生)を対象に、ウェアラブルデバイスを用いて睡眠を測定し、日本の子供の睡眠実態を把握し、子供・保護者に対して睡眠衛生に関する理解の促進をはかる。
簡易な方法により自分の睡眠や生活のパターンを把握できれば、自身の生活スタイルを改善でき、健康に対する意識を高められるとしている。
睡眠の改善は子供の健やかな成長のためにも必要
睡眠と休養は、子供にとっても健やかな成長のために必要だ。子供の睡眠不足や睡眠障害が続くと、肥満や2型糖尿病・高血圧などの生活習慣病、うつ病などの発症リスクが高まり、症状を増悪させるおそれがある。
日本の小・中・高校生は、世界的にみてもっとも夜更かしをしている。日本小児保健協会の調査で、子供の就寝時間が遅くなっており、生活リズムが年々夜型になっていることが明らかになっている。
子供の頃に身についた生活スタイルは、大人になっても引き継がれ、成人してから肥満・メタボ・生活習慣病のリスクに影響する。予防・改善するために、子供のうちから「早起き・早寝」という基本的な生活スタイルを身に付けるのが理想的だ。
そこで理化学研究所と東京大学の研究グループは、とくに小学生・中学生・高校生に焦点をあて、学校現場への技術的支援も含めた「子ども睡眠健診」プロジェクトを開始する。
参加する子供やその保護者に、睡眠測定を身近に感じてもらうとともに、日々の睡眠に対する意識付けを行うことで、子供の生活リズムの改善や健やかな発育・発達につなげることを目指す。
「睡眠測定」を通じた健康管理を当たり前に
研究グループはこれまで、睡眠に関するデータを大規模に取得し、将来的に睡眠測定を日常的に行い、健康増進につなげる取り組みである「睡眠健診運動」を推進してきた。
健康診断をきっかけに自身の健康をあらためて気にするのと同じように、自分の睡眠の状態を定期的に計測することで、自分の睡眠を意識する機会を提供することを目指している。とくにコロナ禍の影響で、生活や働き方が大きく変わり、健康や睡眠への意識は高まっている。
「睡眠健診運動」は主に、成人して働いている人を対象としている。産業界での従業員の健康に対する働きかけや、スマートウォッチでの活動量の計測、スマホアプリによる睡眠把握など、成人の睡眠の実態把握に関する取り組みは進んでいる。
一方で、成長期の子供にとっても、睡眠は学力や体力、心身の健康の保持増進などに重要で、社会的関心も高まっている。しかし、成長期の子供に関する研究は多くない。その理由として、適切な技術的支援が不足していたことが挙げられる。
全国の小中高生と保護者の睡眠リテラシーの向上を目指す
「子ども睡眠健診」プロジェクトでは、腕時計型のウェアラブルデバイスを活用し、多くの子供の睡眠を測定し、独自に開発した最先端のアルゴリズムである「ACCEL」で解析することが計画されている。
参加する子供は、専用ウェアラブルデバイスを郵送で受け取り、それを1週間装着したまま生活し、睡眠日誌を記入する。その後、ウェアラブルデバイスと睡眠日誌を返却し、測定結果のフィードバックを受け取る。
「ACCEL」は、腕の動きをもとに、睡眠覚醒状態を判別する方法。3軸方向の加速度を用い、腕の動きから、睡眠・覚醒状態を判定する。従来の方法に比べ、睡眠中の覚醒を検出する特異度に優れ、中途覚醒の検出ができるという。
研究グループは、こうした客観的な睡眠測定にもとづき、「健康な睡眠」の定義に迫る研究を推進するとしている。
研究は、理化学研究所生命機能科学研究センター合成生物学研究チームの上田泰己チームリーダー(東京大学大学院医学系研究科機能生物学専攻システムズ薬理学教室教授)らによるもの。
「全国の小中高生の睡眠の実態を把握し、子供や保護者、学校に睡眠測定を体験してもらいます。さらに、測定結果のフィードバックを通じて、睡眠衛生の理解を促し、一連の取り組みを通じて睡眠リテラシーの向上を目指します」と、研究グループでは述べている。
「子ども睡眠健診」プロジェクトの実施期間は2025年度までで、ひと月当たり最大1,000人の計測を行う見込み。詳細や参加申し込み方法は、専用のウェブサイトで公開されている。
「子ども睡眠健診」プロジェクト
上田生体時間プロジェクト
東京大学 大学院医学系研究科 機能生物学専攻 システムズ薬理学教室
創造科学技術推進事業「ERATO」(科学技術振興機構(JST))
公益社団法人 日本小児保健協会~子どもの睡眠に関する提言~
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