「昼寝」が長いと肥満やメタボ、高血圧のリスクが上昇 生活が夜型になっている人は要注意
昼寝をとる習慣があり、その時間の長い人は、肥満・メタボ・高血圧のリスクが高いという研究が発表された。長い昼寝をとっている人は、空腹時血糖値が高くなりやすく、糖尿病リスクも上昇するという。
ただし、昼寝は身体や脳の疲労をとるために、効果的な習慣にもなりえる。「昼寝をとるときは15~20分くらいにして、30分を超えないようにすると効果的です」と研究者は指摘している。
昼間に強い眠気のある人は、その背後に思わぬ体の不調や病気が隠れている場合もあるので、医師や専門家に相談することを勧めている。
長過ぎる昼寝は「概日リズム」の乱れにつながるおそれが
研究は、米国のブリガム アンド ウィメンズ病院によるもの。研究グループは、スペインなどの地中海地域の住民を対象に、生活スタイルと肥満や認知症などとの関連を調査している「ONTIME」研究に参加した3,275人以上の成人を評価した。
昼寝は、睡眠の質や認知機能、代謝プロセスに影響をもたらす。昼寝は、身体や脳の疲労をとるために、効果的な習慣にもなる。昼寝をするのが一般的な習慣となっている国や地域もある。
「最近では、短い時間の昼寝は、日中の仕事の生産性を高めたり、生活の質を向上するために、ベネフィットがあると見直されています」と、同病院の睡眠・概日リズム障害部門のマルタ ガローレット氏は言う。
しかし、「昼寝が長時間におよんでいる場合には、悪い影響があらわれるおそれもあります」としている。
1日の睡眠・覚醒リズムは、自律神経による体温調整や、ホルモン分泌、免疫・代謝などと同様に、体内時計によって調節されており、こうしたおよそ1日の周期をもつリズムは「概日リズム」と呼ばれている。
体内時計の周期と24時間の周期とのあいだにズレがある状態が続くと、概日リズムが乱れ、望ましい時刻に入眠したり、覚醒することができなくなってしまう。長過ぎる昼寝は、概日リズムの乱れにつながるおそれがある。
15~20分程度の短い昼寝はむしろ健康的
研究グループは今回、昼寝と体の代謝の健康との関係を解明するため、昼寝の頻度や時間、肥満やメタボリックシンドロームとの関連について調査した。
その結果、昼寝を1日に30分以上とっている人では、そうでない人に比べ、体格指数(BMI)やウエスト周囲径が高く、空腹時血糖値、収縮期(最高)血圧、拡張期(最低)血圧の値がそれぞれ高い割合が多く、メタボに該当する人が多い傾向があることが明らかになった。
一方、「パワーナップ」として知られる、15~20分程度の短い昼寝をとっている人では、肥満や代謝のリスクの上昇はみられず、まったく昼寝をとらない人に比べ、むしろ血圧値が下がるなどの好ましい変化がみられた。
「昼寝はすべてが同じというわけではありません。時間の長さや、1日の生活リズム、食事のタイミング、疲労、睡眠の質などの要因についても考慮し、調整する必要があると考えられます」と、ガローレット氏は指摘している。
生活スタイルが夜型になっている人で「長い昼寝」の悪影響は深刻
とくにタバコを吸う習慣のある人では、1日あたりの喫煙本数が多いほど、昼寝時間が長いと体重が増えやすいことも分かった。
また、夜に食事をとったり就眠する時間が遅かったり、昼寝の前の昼食で食べ過ぎており、エネルギー摂取量が多い人では、昼寝時間が長いと肥満になりやすいことも示された。
さらに、ソファやソファベッド、肘掛け椅子で昼寝をとっている人は、最高血圧が高くなりやすいことも分かった。
これまでに報告されている、英国で実施されている大規模なコホート研究でも、適度な昼寝は健康的だが、時間が長過ぎると、肥満、とくに内臓脂肪型肥満のリスクの上昇と関連することが示されている。
「夜に食事や睡眠をとる時間が遅く、生活スタイルが夜型になっている人や、タバコを吸う習慣がある人は、昼寝のとりかたに注意した方が良いかもしれません。昼寝をどのようにとると高いベネフィットを得られるかを解明するために、より多くの研究が必要です」と、ガローレット氏は述べている。
なお、今回の研究では調査されていないが、昼間に強い眠気があり、昼寝をとっている人は、脳内の神経伝達物質が影響し、日中に耐え難い強い眠気の起こる「ナルコレプシー」や、睡眠中に呼吸が止まり睡眠の質が下がり、昼間の眠気につながる「睡眠時無呼吸症候群」が隠れている場合も考えられる。
また、夜勤の多い勤務体制に就いている人などでは、睡眠と覚醒のリズムが乱れやすくなっていることもある。そうした場合は、医師や専門家に相談することを勧めている。
Longer siestas linked to higher risk of obesity, metabolic syndrome, and high blood pressure (ブリガム アンド ウィメンズ 2023年4月26日)
Lifestyle mediators of associations among siestas, obesity, and metabolic health (Obesity 2023年4月26日)
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