「熱中症搬送者数予測サイト」を公開 1週間先までの熱中症搬送者数を予測 名古屋工業大学

 名古屋工業大学は、「熱中症搬送者数予測サイト」の公開を開始した。8都道府県を対象に、1週間先までの熱中症搬送者数を予測するもの。

 日ごとの熱中症搬送者数の予測人数がリアルタイムで分かるため、熱中症リスクの低減に向けた啓発活動や、救急搬送される患者数の推定などへの利用が期待される。

 対象となる都道府県を順次拡大する予定としている。

1週間先までの熱中症搬送者数がリアルタイムで分かる

 名古屋工業大学は、「熱中症搬送者数予測サイト」の公開を試行的に開始した。8都道府県(東京都、大阪、愛知、福岡、宮城、新潟、広島、北海道)を対象に、熱中症搬送者数の予測値を、1週間先まで表示するもの。

 日ごとの熱中症搬送者数の予測人数がリアルタイムで分かるため、熱中症リスクの低減に向けた啓発活動や、救急搬送される患者数の推定などへの利用が期待される。

 開発したモデルでは、熱中症による搬送者を、屋内(居住地)での発症と、屋外(居住地外)での発症に区分し、また高齢者では連続する3日間の気象条件によって熱中症リスクが増大することや、暑熱順化によって初夏と晩夏で熱中症リスクが違うことなども考慮されている。

 週間天気予報を利用することで、1週間先までの熱中症による搬送者数の予測を、都道府県別に提供できるようになった。

 それによると、たとえば東京では、7月中旬までは熱中症搬送者数は増加するが、下旬以降は暑熱順化により減少傾向に転じるとみられる。ただし、8月中旬頃には増加するという予測も出ており、油断はできない。

過去の気象データと約14万件の熱中症搬送者データを分析

 研究は、名古屋工業大学電気・機械工学類および先端医用物理・情報工学研究センター長の平田晃正教授、小寺紗千子准教授、三輪将大氏(物理工学科)、村川卓也氏(情報工学科)らの研究グループによるもの。

 研究グループはこれまで、気象データを用いて熱中症の搬送者数を予測する技術を開発しており、その技術をベースに、2013~2019年の6~9月の気象データと、約14万件の熱中症搬送者データを分析し、予測サイトの試行運用を開始した。今後も順次、対象となる都道府県を拡大する予定としている。

 地球温暖化などの影響から、熱中症の患者数は増加の一途をたどり、とくに子供や高齢者は熱中症の高リスク群とされており、いっそうの注意が必要となっている。

 研究グループはこれまで、数値人体モデルを用いた体内温度の上昇、および発汗量の解析手法を開発し、さらに気象データを入力とした大規模シミュレーションによって得られた1日の発汗量と熱中症による搬送者数とのビッグデータを融合させ、熱中症による搬送者数を推定可能な予測式を開発してきた。

 熱中症発症リスクは当日の気温の高さだけでなく、高齢者では前2日間の気象条件も影響すること、さらには成人では当日の暑さが直接的な要因となることを立証している。

 これらの技術はすでに、名古屋市消防局との共同研究で、救急隊の効果的な運用や熱中症予防啓発などに実用化されているという。

熱中症搬送者数予測サイト (名古屋工業大学)

名古屋工業大学 先端医用物理・情報工学研究センター


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