【新型コロナウイルス感染症】予防ワクチンの開発はここまで進んでいる
ワクチンはすでに開発され、治験も開始された。10億ドル(1,100億円)を超える開発資金を投入されたプロジェクトも進行している。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発生が最初に報告されたのは2019年12月。
これ以降、世界ではCOVID-19に対するワクチン開発の競争が繰り広げられている。
COVID-19に対する最初のワクチンは、開発に着手してからわずか2ヵ月で米国で完成した。
「mRNA-1273」は、米国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)とバイオベンチャーの米モデルナ社が共同で開発したワクチン。COVID-19の予防ワクチンとして、はじめて開発されたものになる。
「mRNA-1273」の第1相臨床試験はすでに開始されており、18~55歳の成人45例が登録されている。第1相試験は6週間行われ、その最初の結果は2ヵ月余りで分かるとみられている。
「mRNA-1273」は、mRNAワクチンという新しいタイプのワクチンだ。ウイルスは一切含まれておらず、開発期間を従来より大幅に短縮することができる。
従来の鶏卵培養などで作られるワクチンは、含まれるタンパク質などの物質に対して免疫反応が生じ、病原体に対する抗体が体内に作られる仕組みになっている。
これに対して、mRNAワクチンは、そのタンパク質を作り出す遺伝物質であるmRNA(メッセンジャーRNA)を投与する。mRNAは病原体の設計図であり、これから病原体の一部が体内で作られ免疫反応が生じる。
「新型コロナウイルスによる感染を防ぐために、安全で効果的なワクチンの開発が緊急に求められています。その第一段階はすでに達成されています」と、NIAIDディレクターのアンソニー ファウチ氏は言う。
ジョンソン・エンド・ジョンソンは3月31日に、COVID-19ワクチンの主要候補を見つけたと発表した。
同社の医薬品部門であるヤンセンの研究チームは、ハーバード大学医学部附属病院ベス・イスラエル・ディーコネス・メディカルセンター(BIDMC)と共同で、複数のワクチン候補を作製しテストを行った。そして、COVID-19のリードワクチン候補を同定した。
これを受け、2020年9月に第1相臨床試験を開始することを目指している。これにより、医療従事者を中心に使われる緊急用ワクチンは2021年初頭に利用できるようになる見込みだという。
通常のワクチン開発プロセスには、候補の承認プロセスの開始前にも、5年から7年にわたるさまざまな研究段階があるが、今回については通常のワクチン開発プロセスと比較して大幅に期間が短縮される。
米国生物医学先端研究開発局(BARDA)とヤンセンは、提携を大幅に拡大し、10億回分を超えるワクチンを世界規模で供給することを目指して製造能力の拡大を進めている。
BARDAと同社は、共同で10億ドル(1,100億円)を超える投資を行い、ワクチンの研究、開発、臨床試験に共同出資した。
米国の製造拠点を新たに設立し、米国外での生産能力を拡大し、世界的な製造能力の拡大を目指している。これによりワクチンの迅速な生産が可能になり、10億回分を超えるワクチンを世界中に供給できるようになるという。
SARS-CoV-2は呼吸器系を攻撃するコロナウイルスと呼ばれるウイルス群に属しており、現在のところ、COVID-19に対する承認済みのワクチンおよび治療薬はない。
「世界は公衆衛生上の緊急事態に直面しており、COVID-19のワクチンをできるだけ早く、手頃な価格で、世界中で入手できるようにするという役割に全力で取り組んでいます」と、同社では述べている。
NIH Clinical Trial of Investigational Vaccine for COVID-19 Begins(アメリカ国立衛生研究所(NIH) 2020年3月16日)
Moderna’s Work on a Potential Vaccine Against COVID-19(モデルナ 2020年3月30日)
ジョンソン・エンド・ジョンソン、COVID-19のリードワクチン候補、 米国保健福祉省との画期的な新規提携、緊急パンデミック用に世界で 10億回分のワクチン供給を発表(ヤンセン ファーマ 2020年3月30日)