【新型コロナ】ワクチン接種を「希望する」は62.1% 「自分だけでなく、他者も守れる」という思いが接種の希望を高める
女性や若年者、低所得者では接種を希望する人が少ない傾向があることが明らかになった。
一方で、ワクチンは効果があると認識していたり、「自分が予防接種を受けることで他者も守れる」という思いがあると、接種の希望が高まることも分かった。
COVID-19ワクチン接種を普及する上で、意欲を高める啓発活動が重要であることが示された。
ワクチン接種は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的な流行の打開策として期待されている。日本でも医療従事者を中心に接種が開始された。今後、一般市民の予防接種も段階的に開始される予定だが、その際に問題となる可能性として「ワクチン忌避」が挙げられる。
ワクチン忌避とは、「予防接種が受けられるにもかかわらず、受けることを躊躇する、あるいは拒否する」こと。予防接種の摂取率を高くすることが世界的な課題となっている。
そこで東京医科大学は、COVID-19ワクチン接種に対する考えについて、全国の20~79歳の男女3,000人を対象にインターネット調査を行った。
調査は、COVID-19ワクチンに対する市民の接種忌避と、それに影響する要因を明らかにすることを目的に実施したもの。1月14日に日本全国の20歳~79歳の市民3,000人(性別、年齢、居住地域の構成割合が人口推計と一致するように対象者を抽出)を対象に、オンラインで行った。
研究は、東京医科大学公衆衛生学分野の町田征己助教らの研究グループによるもの。研究成果は、「Vaccines」オンライン版に掲載された。
回答者のうち62.1%が、ワクチン接種が可能になった際に、予防接種を「とても受けたいと思う」「やや受けたいと思う」と回答した。
多変量解析の結果では、接種を希望する割合は、女性では56.4%、20~49歳の若年者で54.5%、低所得者で55.6%と、とくに少ないことが明らかになった。
また、心理的要因として、「自分がCOVID-19にかかる可能性が高い」「COVID-19が深刻な病気だ」「ワクチンは効果がある」「自分が予防接種を受けることで他者も守る」という思いがあると、接種の希望が高まる傾向が示された。
とくに、「ワクチンは効果があると思っている」という認識が高い人を、低い人と比べると、ワクチン接種の希望は9.15倍に上昇した。
また、「自分が予防接種を受けることで他者も守る」という思いが強いと、ワクチン接種の希望は3.51倍に上昇した。
ワクチンの効果には、ワクチン接種により個人の免疫機能を高めて、感染症を発症する可能性を下げる「直接効果」と、ワクチン接種率が高まることで集団免疫を獲得し、ワクチンを摂取していない人が感染するリスクも下げる「間接効果」がある。間接効果は、新生児やアレルギーがある人など、ワクチン接種を受けられない人たちを守る重要な役割を果たす。
「ワクチンは効果がある」と「予防接種を受けることで他者も守る」という認識は、他の要因よりも強い関連性があり、予防接種を受けるかどうか判断する上で重要な要素になっていることが明らかになった。
心理的要因とワクチン接種希望との関連
性別や年齢、収入によって接種希望者の割合が異なる結果になったことの背景には、今回の研究では明らかにできなかった、さまざまな心理的要因や社会的背景があると考えられるという。
「研究により、COVID-19ワクチンの接種希望者の割合は性別、年齢、収入によって異なることや、さまざまな心理的要因が判断に影響を与えるなかで、とくに、”ワクチンは効果がある”と思っていることと、”自分が予防接種を受けることで他者も守る”という思いがあることの2点が重要であることが明らかになりました」と、研究者は述べている。
「積極的な普及啓発を行いワクチン接種希望者を増やすことは、国民全体のワクチン接種率を高める上で重要と考えられます。また、普及啓発を行ううえでは、ワクチンの効果についてと、自分が予防接種を受けることで、他者を守ることもできるということを啓発することがとくに重要と考えられます」としている。
東京医科大学公衆衛生学分野
Acceptance of a COVID-19 vaccine in Japan during the COVID-19 pandemic(Vaccines 2021年3月3日)