【新型コロナ】肥満と過体重が重症化の危険因子 人工呼吸を必要とする可能性が73%上昇
中国、米国、イタリア、南アフリカ、オランダなど11ヵ国の18の医療機関に入院した7,244人のCOVID-19患者を調査した結果、肥満または過体重の患者は、COVID-19の転帰を悪化させるリスクが高く、人工呼吸を必要とする可能性が73%高いという結果になった。
肥満と過体重は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を重症化させる危険因子で、該当する患者は侵襲的な呼吸補助が必要となる可能性が非常に高いことが、オーストラリアのクイーンズランド大学とマードックチルドレンズ研究所(MCRI)により明らかになった。研究成果は「Diabetes Care」に掲載された。
「肥満によるCOVID-19の疾病負荷の増加について明らかにした今回の調査結果は、肥満の複雑な社会経済的影響に対処するための戦略や、ジャンクフードなどの食品広告の制限などの公共政策を緊急に導入する必要があることを示しています」と、MCRI小児内分泌学のダニエル ロングモア氏は述べている。
「短期的に肥満に対処する措置を講じることが、COVID-19のパンデミックにすぐに影響をもたらす可能性は低いのですが、今後のウイルス性感染症のパンデミックによる負担を減らし、心臓病や脳卒中などの合併症のリスクの減少につながります」としている。
研究では、中国、アメリカ、イタリア、南アフリカ、オランダを含む11ヵ国の18の病院に入院したCOVID-19患者を調査した。18歳以上の7,244人の患者のうち、34.8%が過体重で、30.8%が肥満だった。
肥満のCOVID-19患者はそうでない患者に比べ、酸素吸入や侵襲的な人工呼吸を必要とする割合が73%高かった。過体重の患者でも、控えめではあるが同様の傾向がみられた。一方、肥満と過体重とCOVID-19による院内死亡との間に関連はみられなかった。
心血管疾患や既存の呼吸器疾患は、院内死亡のオッズ増加と関連していたが、酸素と人工呼吸器を必要とするリスクは高くなかった。糖尿病の患者では、侵襲的な呼吸補助が必要になる割合は高く、これに肥満が加わるとリスクがさらに増加することはなかった。
また、男性は女性に比べ、COVID-19が重症化し侵襲的な人工呼吸器が必要となるリスクが高かった。65歳以上の高齢者でも、酸素吸入を必要とする割合が高く、院内死亡率も高かった。
「過体重または肥満が、成人のCOVID-19入院患者の病状悪化の独立した危険因子であることが、大規模な調査で示されました」と、研究を共同で主導したクイーンズランド大学化学分子生物科学部のカースティ ショート氏は述べている。
「世界人口の40%が過体重か肥満と推定されています。肥満は、代謝性心疾患や呼吸器疾患のリスクの増加、インフルエンザ、デング熱、SARSコロナウイルスなどのより重篤なウイルス性疾患など、多くの健康状態の悪化に関連しています」と指摘している。
過去の報告でも、肥満がCOVID-19重症化の重要な危険因子であることは示されていたが、そのデータのほとんどは単一サイトから収集されており、多くの地域を代表していなかったとショート氏は指摘。
「今回の研究は、COVID-19ワクチン接種の優先順位を策定する際の参考になります。WHOは現時点で、COVID-19重症化の危険因子としての過体重や肥満について高品質のデータをもっていません。得られたエビデンスは、どの高リスクグループを優先してワクチン接種をするべきかを決定するのに役立ちます」と、MCRIのディビッド バーグナー教授は述べている。
Patients who are overweight or obese at risk of more severe COVID-19(マードックチルドレンズ研究所 2021年4月16日)