【新型コロナ】子供たちの食事への影響も大きい コロナ禍で食事の質が低下「食材を選ぶ経済的余裕がない」
最初の緊急事態宣言(2020年4~5月)の期間に、感染拡大により保護者の食事準備への負担感が増え、食事バランスの良くない子供が増加したことや、とくに世帯所得が低い家庭でその影響が大きいことなどが明らかになった。
「コロナ禍はまだしばらく続きます。子供たちへの影響を注視していく必要があります」と、研究者は述べている。
新型コロナのパンデミックにより、大人だけでなく、子供たちの生活も大きく変化した。国立成育医療研究センターの研究グループは、厚生労働科学研究「新型コロナウイルス感染症流行前後における親子の栄養・食生活の変化及びその要因の解明のための研究」にもとづき、2020年12月に調査を実施した。
2020年12月に、全国の小学5年生と中学2年生の子がいる世帯から無作為に選ばれた3,000世帯の家庭を対象に、子供のたちの食事状況についての調査を実施し、1,551世帯(52%)から回答を得た。
その結果、最初の緊急事態宣言(2020年4~5月)の期間に、バランスの良い食事(肉、魚、卵と野菜を両方1日に2回以上を含む)をとれている子供の割合は低下していたことが分かった。
とくに、世帯人員1人当たりの平均所得が低い家庭ほど、バランスの良い食事をとれている子供の割合は大きく低下したことも明らかになった。
所得の高い家庭では、バランスの良い食事をとれている子供の割合は91%だったのが、緊急事態宣言により75%に減り、宣言後は90%に回復した。
一方、所得の低い家庭では、バランスの良い食事をとれている子供の割合は88%だったのが、緊急事態宣言により62%に減り、宣言後は89%に回復した。
世帯所得四分位別
新型コロナの拡大により、ステイホームや不要不急の外出の自粛が求められた。その影響で、感染拡大前よりも食事を作る時間や心の余裕が「増えた」と回答した保護者がみられた一方で、「減った」という保護者も少なくない。
とくに世帯人員1人当たりの平均所得が低い家庭では、「食事を作る時間の余裕が減った」「食事を作る心の余裕が減った」「食材や食事を選んで買う経済的余裕が少なくなった」と回答した保護者の割合が、所得の高い家庭と比べて多かった。
新型コロナの拡大前に比べ、「食材や食事を選んで買う経済的余裕が少なくなった」という保護者は、世帯収入の高い保護者では3%だったが、低い保護者では33%に増えた。
学童期の子供たちの肥満ややせが、コロナの流行前に比べ大きく増加していることが、2020年度「学校保健統計調査」などでも報告されている。同調査では、「間食(おやつ)の機会や量が増えた」という保護者は31%に上った。
「コロナ禍はまだしばらく続きます。子供たちへの影響を注視していく必要があります。長引くコロナ情勢下で、子供たちが適切な食事を摂取し健康を守るようにできる社会としての取り組みが望まれます」と、研究グループは述べている。
「今後も各調査結果や社会情勢などをふまえて、継続調査を実施していく予定です。重大な調査結果は速やかに公開し、現場での子供たちへのケアや施策提言に活かされるよう努めます」としている。
研究は、国立成育医療研究センター社会医学研究部の森崎菜穂部長、新潟県立大学の村山伸子教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Nutrients」に掲載された。
国立成育医療研究センター社会医学研究部
Changes in Selected Food Groups Consumption and Quality of Meals in Japanese School Children during the COVID-19 Pandemic(Nutrients 2021年8月10日)