【新型コロナ】バランスの良い食事をとれない子供が増加 大人もコロナ禍で食生活は不健康に
感染拡大により保護者が食事の準備をする負担感が増えていることも明らかになった。
食生活が不健康になった成人も多いことが、大規模な調査で示された。
オンラインでの食料品の注文で、野菜が減り、バーベキューや揚げ物などは増えているという。
新型コロナの流行は、全国の子供たちの食事にまで影響をもたらし、バランスの良い食事をとれていない子供が増え、感染拡大により保護者が食事の準備をする負担感が増えていることが、全国調査で明らかになった。とくに世帯所得が低い家庭で深刻だという。
調査は、国立成育医療研究センターと新潟県立大学によるもの。学童期の子供たちの肥満とやせが、コロナ流行前から大きく増加していることは、学校保健統計調査などでも示されている。
研究グループは、2020年12月に、全国の小学5年生・中学2年生の子供がいる世帯から無作為に選ばれた3,000世帯の家庭を対象に、「新型コロナウイルス感染症流行期前後における親子の食事と健康に関する実態調査」を実施し、1,551世帯からの回答を得た。
その結果、「バランスのとれた食事」(肉・魚・卵と野菜の両方を1日に2回以上)をとれている子供の割合は、世帯収入に関わらず緊急事態宣言中に低下したことが分かった。
とくに世帯収入が低い家庭ほど、緊急事態宣言中に「バランスのとれた食事」をとれている子供の割合は、88%から62%へと大きく低下した。
また、所得が低い家庭では、食事を作る時間の余裕が減った、食事を作る心の余裕が減った、食材や食事を選んで買う経済的余裕が少なくなったと回答した保護者が多くみられた。
「食事を作る時間の余裕が減った」という保護者は16%、「食事を作る心の余裕が減った」は17%に上り、それぞれ「増えた」を上回った。
「食材を選んで買う経済的余裕が少なくなった」という保護者は、所得が低い家庭では33%に上った。また、「間食(おやつ)の機会や量が増えた」と答えた保護者は31%に上った。
研究は、国立成育医療研究センター社会医学研究部の森崎菜穂部長、新潟県立大学の村山伸子教授らによるもの。
「長引くコロナ情勢下でも、子供たちが適切な食事を摂取し健康を守るようにできる社会としての取り組みが期待されます」と、研究者は述べている。
新型コロナの拡大の影響で、食生活が不健康になった成人が多いことが、シンガポール国立大学の研究により示された。
新型コロナ対策として都市のロックダウン(閉鎖)を実施した国は多いが、ロックダウン中には食生活が不健康になりがちであることはこれまでも報告されている。
研究グループは、シンガポールを拠点とするオンラインでの食料品やデリバリーの注文アプリで得たデータを使用して、ロックダウンと食生活との関連を調査した。シンガポールの1万1,372人の、2020年8月から2021年7月のデータを解析した。
その結果、ロックダウン中の野菜や野菜料理の注文は15%減少し、バーベキューや揚げ物などは11%増加した。外出禁止令が出された時期には、野菜・野菜料理の注文は21%減少し、ロックダウン後もこれらの傾向は続いた。
「新型コロナの影響は、家庭の食卓まで及んでおり、多くの人が食事スタイルを不健康なものに変えてしまった可能性があります。政府はコロナ対策やロックダウンを実施するときに、国民に健康的な食品の選択などについて教えるなど、適切な保健指導を行う必要があります」と、研究者は述べている。
国立成育医療研究センター社会医学研究部
Changes in selected food groups consumption and quality of the meal in Japanese school children during the COVID-19 pandemic(Nutrients 2021年8月10日)
Changes in eating habits during pandemic(JAMA Network Open 2021年9月23日)
Assessment of Online Food Ordering and Delivery in Singapore During the COVID-19 Pandemic(JAMA Network Open 2021年9月23日)