【新型コロナ】小・中学生の体力が低下 運動時間が減少し、肥満は増加 スポーツ庁「全国体力・運動能力調査」
同庁では、コロナ禍による運動時間の減少や、テレビ・スマホ・ゲームなどを視聴するスクリーンタイムの増加などの影響を指摘している。「コロナの感染拡大を防止するため、学校の活動が制限されたことで、体育の授業以外での体力向上の取組みが減少したと考えられる」としている。
スクリーンタイムが長くなり、体力合計点が低下
スポーツ庁がまとめた2021年度「全国体力・運動能力調査」の結果によると、体力合計点は小・中学生の男女とも、2019年度調査と比べ低下した。調査は、全国の小学5年生と中学2年生を対象に、2021年4~7月に実施したもの。
その背景には、コロナ禍で体育の授業以外に運動時間が減ったことや、テレビ・スマホ・ゲームなどを視聴するスクリーンタイムが増加し、運動の機会が減ったことがある。
体育の授業を除く1週間の運動時間は、男女ともに短くなり、男子は小学生が47.8分(2019年は51.4分)、中学生では77.6分(同82.1分)だった。
さらに、学習以外の1日のスクリーンタイムは2時間以上の割合が小・中学生の男女ともに増えていた。視聴時間が長時間になるほど、体力の合計点が低下する傾向がみられる。
学習以外のスクリーンタイムは、視聴時間が2時間以上の割合が増加
肥満の割合も前回から大幅に増加した。とくに男子が顕著で小学生は13.1%(同11.1%)、中学生は10.0%(同8.6%)となり、小学生男女と中学生男子の肥満率は過去最大となった。肥満である児童生徒は、そうでない児童生徒にくらべ、体力合計点が低い傾向がみられる。
とくに小学生男女・中学生男子は過去最大の数値に
「まずはコロナの感染拡大防止に努めつつ、体育の授業などでできることから実施していくことが重要。そのうえで、コロナの感染状況をふまえ、子供の体力向上をはかるために、運動やスポーツをすることが好きな子供たちの育成を目指した体育授業の工夫・改善などの取組をいっそう推進し、幼児期からの運動習慣の形成に取り組む」と、スポーツ庁では述べている。
なお報告書では、コロナ禍でも体力向上の取組みの継続・充実をはかり、運動好きの子供たちを増やしながら体力向上の成果をあげている学校も事例紹介している。
コロナ禍で小・中学生の体力低下 運動やスポーツが好きな児童生徒は減少
スポーツ庁は、小・中学生の体力低下の要因として、2019年度から指摘されていた、(1)運動時間の減少、(2)学習以外のスクリーンタイムの増加、(3)肥満である児童生徒の増加といった傾向が、新型コロナ拡大の影響を受けさらに拍車がかかったと指摘。
小・中学生の体力は、全8種目の実技テストのうち、「長座体前屈」はおおむね向上したものの、それ以外の「上体起こし」「反復横とび」「20メートルシャトルラン」「持久走」(中学生のみ)では大きく低下した。「握力」「50m走」「立ち幅とび」についても、中学男子以外は低下傾向がみられる。
「上体起こし」は小学生の男子の平均が18.9回(2019年は19.8回)、女子は18.1回(同19.0回)、中学生の男子は25.9回(同26.9回)、女子は22.2回(同23.6回)だった。
「持久走」では、男子が1,500メートルを407.2秒(同400.0秒)、女子が1,000メートルを298.3秒(同290.6秒)と低下した。
調査は実技テストの結果を10点満点で換算し、合計80点満点で評価を示しているが、小・中学生の男女ともに上位の生徒の割合が減って下位の割合が増えた。とくに中学校の女子では、2019年度の50.0点から48.4点に下がった。
一方、「長座体前屈」が向上した要因としては、授業や家庭で比較的取り入れやすかったり、呼吸が苦しくなりにくい準備運動やストレッチなどの柔軟性を重視した活動が増えたことがひとつの要因と考えられるという。
「運動やスポーツに対する意識」の質問では、小中学の男女ともに「好き」と回答した割合が減少している。過去の調査でも、運動やスポーツに対する意識が高い児童生徒は、体力合計点が高く、また1週間の総運動時間も長い傾向がみられる。
スポーツ庁では「社会のデジタル化は今後も避けられない。コロナ禍の影響による、運動をしない、もしくは運動の時間が減少したままの生活習慣が定着してしまうことは避ける必要がある」としている。
「学校や家庭で日頃から児童生徒に、運動やスポーツをすることの大切さを伝えるとともに、運動の楽しさを実感し、工夫しながら運動をする習慣の定着に努めることが大切」としている。
一方で、「コロナの影響による児童生徒の体力低下の回復を急ぐあまり、過度に運動やスポーツを実施したり、トレーニング的な取組みに偏ることは避けるべき。児童生徒の実態に照らして、着実で継続的な取組みを進める必要がある」とも指摘している。
なお、昨年度の同調査は新型コロナウイルスの影響で参加校が少なかったため、結果は「参考値」として示していた。