6.5%の児童が「家族の世話」、学業や生活に影響も ヤングケアラーの実態に関する調査結果

 厚生労働省はこのほど、文部科学省と日本総研と連携して実施した「ヤングケアラーの実態に関する調査結果」を公表した。

 ヤングケアラーについての全国調査として初めて実施した令和2年度は中高生を対象としたが、令和3年度はまだ全国規模で実態把握されていない小学生や大学生を対象とした。

 また、一般国民を対象にヤングケアラーの認知度調査も実施。調査の結果、6.5%の児童が「家族の世話をしている」と答え、学業や生活に影響が出ている様子がうかがえた。

令和3年度は初めて小学生による家族のケアについて調査

 ヤングケアラーとは、一般社団法人日本ケアラー連盟による定義で「家族にケアを要する人がいる場合に、大人が担うようなケア責任を引き受け、家事や家族の世話、介護、感情面のサポートなどを行っている18歳未満の子ども」とされている。

 全国規模の「ヤングケアラーの実態に関する調査研究」は令和2年度に初めて実施。全国の中学生・高校生を対象に調査したところ、世話をしている家族が「いる」と回答したのは中2で5.7%、全日生の高2で4.1%だった。このうち中2の約半数、高2の約2割が小学生の時からケアを始めていた。

 年齢が低いほど本人の自覚が乏しく表面化しにくいことから、令和3年度は早期発見のため初めて小学生による家族のケアについて調査した。また前述の定義でヤングケアラーは「18歳未満」とされているが、ケアの負担は大学生活や就職活動にも影響を及ぼすことから、大学生についても初めて全国調査が行われた。ヤングケアラーについての理解が支援につながることから、社会全体における認知度についても調査している。

ヤングケアラーに該当する児童が「いる」小学校は約3割

 小学生を対象にした調査では、全国の小学校から無作為で350校を抽出。支援が必要だと思われる子供への対応やヤングケアラーの認識について小学校を対象にした調査では260件から回答を得たうえで、参考となる事例を取りまとめるため6校にはインタビュー調査も実施した。また小6の児童に家族に対する世話の状況や普段の生活に関して聞いた調査では、約1万件の回答を得た。

 その結果、ヤングケアラーの「言葉を知っている」と回答した学校は約9割に上った。一方で言葉は知っていても、「学校として特別な対応はしていない」が全体の約半数を占めた。言葉を知っていて「学校として意識して対応している」と答えた学校は全体の約4割で、これらの学校に実態把握の状況について聞いたところ、約14%の学校で、ヤングケアラーと思われる子どもはいても、その実態を把握していなかった。

 ヤングケアラーの定義と状態像を示したうえで、該当すると思われる子どもの有無について聞いたところ、「いる」と答えた学校は約34%。これらの学校に子どもの状況について聞いたところ、「家族の代わりに、幼いきょうだいの世話をしている」が最も多く8割を占めた。次いで多かったのは「家族の通訳(日本語や手話など)」、「障害や病気のある家族に代わって家事」でそれぞれ約2割の回答を集めた。

学校側は把握が難しい現状

 一方、ヤングケアラーと思われる子どもがいるかわからない、と回答した学校に理由を聞いたところ、「家庭内のことで問題が表に出にくく、実態の把握が難しい」という回答が88%と最多。「ヤングケアラーである子ども自身やその家族が問題を認識していない」とした回答は約32%だった。そのため支援には、教職員や子ども自身がヤングケアラーについて知ることが必要、と考える学校が多かった。

 要保護児童対策地域協議会(要保護児童などの支援を目的に地方公共団体が設置)に通告したケースのうち直近の事例について詳しく聞いたところ、学校生活では「学校を休みがち」「遅刻や早退が多い」とする割合が高く、「身だしなみが整っていない」「学力が低下している」「提出書類の遅れや忘れが多い」も多かった。家族構成は「ひとり親家庭」が半数を超えた。

学校生活に影響も

 小学生自身に実施したアンケート調査で、「家族の世話をしている」と回答した小学生は6.5%。世話を必要としている家族は「きょうだい」が約7割を占め、「母親」も約2割いた。「家族の世話をしている」と回答した人のうち約半数は、「就学前から」「低学年のうちから」世話をしていた。「授業中に寝る」、「宿題ができない」、「忘れ物が多い」とする回答は、世話をしていない人に比べて2倍前後高く、学校生活に影響が出ていることがうかがわれる。

 報告書では今後の課題について、小学校においては家庭の状況を把握するため、スクールソーシャルワーカーや行政の担当者との連携が必要だとした。

 また小学生に対しては、1日あたり7時間以上世話をしている人のうち約3割が「特に大変さは感じていない」と回答していることなどから、置かれた状況を十分に理解できていない可能性がある。そのため周囲の大人がヤングケアラーに対する意識を高め、必要な支援につなげるきっかけを作れるような体制を整えていくことが課題、だとした。

 報告書では、ほかにも大学生の調査結果と、一般国民アンケート調査についてまとめている。厚生労働省はヤングケアラーの早期発見で適切な支援につなぐため、ヤングケアラーの社会的認知度をさらに向上させていきたい考え。


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