スマホやゲーム機で遊ぶ時間が長いと睡眠障害に 子供の言語力や認知力の発達が低下 食習慣も大切

 就学前の子供が、スマートフォン・タブレット・パソコン・テレビ・ゲーム機などのメディアを見ている「スクリーンタイム」が長いと、睡眠の質の低下や、言語力や認知力の発達の低下につながることが明らかになった。

 小児から思春期の子供の健康的な食習慣は、質の良い睡眠と密接に関連しているという調査結果も発表された。

 「子供や子供のいるご家庭に対しても、食事や睡眠の質を高めるために、専門職によるカウンセリングや保健指導が必要です」と、研究者は指摘している。

子供のスクリーンタイムが長くなると発育に障害が

 就学前の子供が、スマートフォン・タブレット・パソコン・テレビ・ゲーム機などのメディアを見ている「スクリーンタイム」が長いと、睡眠の質の低下や、言語力や認知力の発達の低下につながるおそれがあるという調査結果を、英国のニューカッスル大学が発表した。

 世界保健機関(WHO)とオーストラリア保健省は、2歳未満の子供のスクリーンタイムが長くならないようにし、2~4歳の子供では1時間を超えないようするよう推奨している。しかし、オーストラリアの未就学児の4分の3は、この推奨値を超えて、テレビやゲームなどのメディアを見ているという。

 「過去10年間で、スマートフォンや動画配信サービス、ゲーム機など、さまざまな新しいメディアが登場し、子供たちがそうしたデバイスにアクセスすることが増えています」と、同大学心理学部のエマ アクセルソン氏はいう。

 「調査によると、オーストラリアではほぼすべての世帯がパソコン・タブレット・スマートフォン・テレビを所有しており、75%はゲーム機を所有しています。4歳の子供も多くは、自分のデバイスを所有しています」。

 「子供が1日に起きて活動している時間は限られています。スクリーンタイムが長くなると、発育の健康のために必要な有益な活動に費やす時間が少なくなる可能性があります」としている。

スクリーンタイムの長い子供は、睡眠の時間が短く質も低下

 研究グループは今回、オーストラリアの3歳~5歳の子供とその保護者を対象に、子供のスクリーンタイムの長さに関するオンライン調査を実施し、子供の睡眠覚醒スケール(CSWS)を使い、子供の睡眠時間と睡眠の質との関連を調べた。

 子供の睡眠を「どれだけ早くに眠りについているか」「夜中にどれくらいの頻度で目が覚めるか」などのさまざまな観点で記録。さらに、オンラインで視聴しているコンテンツは「リラックス」「エンターテイメント」「教育」の3種類に分類した。

 その結果、スクリーンタイムの長い子供は、睡眠時間が短く、睡眠の質も低下しやすいことが分かった。また、スクリーンタイムが長い子供ほど、コミュニケーション能力が低下し、問題解決力や注意力が低下する傾向がみられた。

 子供の74%は週に4~5日以上テレビを視聴しており、76%はタブレットを2~3日以上使用、71%はスマートフォンを2~3日以上使用していた。好んで見ているコンテンツは、「リラックス」「教育」よりも「エンターテイメント」が多かった。

 なお、子供の発育については、「コミュニケーション」「身体活動」「問題解決」「個人形成」「社会活動」などのスコアで判定した。

子供には質の高い十分な睡眠が必要 神経・学習・記憶に影響

 オーストラリア政府は、就学前の年齢の子供に、1晩に10時間~13時間の睡眠をとることを推奨しているが、スクリーンタイムの長い子供は、睡眠時間がそれよりも短い傾向が示された。

 一方、スクリーンタイムが短いと、日中に活動的に過ごす時間が増え、座ったまま過ごす時間が減り、これが睡眠の質の向上につながっていると考えられる。

 「質の高い十分な睡眠は、日常生活での能力の向上に貢献します。子供の神経・学習・記憶の発達にとって、睡眠は大変に重要です」と、アクセルソン氏は指摘する。

 また、子供たちがエンターテインメントのコンテンツに費やしている時間は1日に2時間近くであり、推奨を超えていた。一方、リラックスや教育のコンテンツを見ていた時間は1日に1時間未満だった。

 「子供たちのほとんどが、エンターテイメントに関するコンテンツに熱中しやすいことが明らかになりました。しかし、リラックスして落ち着けるものや、教育的なプログラムを扱ったコンテンツにはあまり関心を示さないことも分かりました」と、アクセルソン氏はいう。

 「エンターテインメントのコンテンツに費やす時間が長くなるほど、睡眠時間が短くなり、睡眠の質も低下することが懸念されます」としている。

 研究グループは、子供のスクリーンタイムを短縮するために、公衆衛生上の介入を行い、保育現場や家庭でのデジタルデバイスの使用についての明確なガイドラインを策定する必要性について指摘している。

子供の食習慣も睡眠障害に密接に関連
42ヵ国の20万人超を調査

 小児から思春期の子供の健康的な食習慣は、質の良い睡眠と密接に関連しているという調査結果も発表された。▼朝食の欠食、▼野菜や果物の摂取の少なさ、▼お菓子や清涼飲料の食べすぎ・飲みすぎが、いずれも子供の睡眠の質を低下させている可能性がある。

 これは、42ヵ国の11歳~15歳の子供21万3,879人を対象とした調査で明らかになったもの。小児から思春期の子供の睡眠障害の割合は、15~44%と報告されている。

 その結果、朝食の摂取頻度が高いほど、睡眠障害が少なくなることが示された。平日に毎日朝食を食べている子供は、まったく食べない子供に比べ、睡眠障害の割合は1.49倍少なかった。

 また、野菜を週に1回でも食べている子供は、まったく食べない子供に比べ、睡眠障害の割合は1.08倍少なかった。お菓子の摂取頻度が週に1回未満の子供は、1日に2回以上食べている子供に比べ、睡眠障害は1.31倍少なかった。

 「調査は、子供の朝食や野菜・果物の摂取頻度を増やすことが重要であることを裏付ける結果になりました。子供の睡眠習慣を改善するために、お菓子や清涼飲料をとりすぎないことも必要です」と、研究者は述べている。

 「子供や子供のいるご家庭に対しても、食事や睡眠の質を高めるために、専門職によるカウンセリングや保健指導が必要です」としている。

Preschoolers’screen time logs link to sleep and development (ニューカッスル大学 2022年11月26日)
Preschoolers’ engagement with screen content and associations with sleep and cognitive development (Acta Psychologica 2022年10月)
Eating habits matter for sleep difficulties in children and adolescents: A cross-sectional study (Children and Health 2023年6月12日)


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