お肉の調理法で良いのは[茹でる・蒸す・煮込む] 肥満リスクを高める「AGE(終末糖化産物)」とは?
肥満や糖尿病とも関連の深い「AGE(終末糖化産物)」は、タンパク質と糖が加熱されてできた物質で、老化を進める原因物質とみられている。
血中のブドウ糖が過剰になり、体の細胞や組織を作っているタンパク質と結びついて「糖化」が起き、AGEができる。
超加工食品やジャンクフードの多くにAGEが含まれており、空腹感や食欲を増大させ、さらに食べすぎにつながるという”負のスパイラル”におちいりやすいことが分かった。
肉などの料理方法を少し変え、「茹でる」「蒸す」「煮込む」ことが、肥満の予防・改善に役立つ可能性がある。
AGE(終末糖化産物)は老化を進める原因物質
肥満や糖尿病とも関連の深い「AGE(終末糖化産物)」は、タンパク質と糖が加熱されてできた物質で、老化を進める原因物質とみられている。
糖尿病は、血糖値を下げるインスリンが足りなくなったり、十分に働かなくなり、血糖を細胞にとりこめなくなり、血液中に糖が増えすぎてしまうことで発症する。
血中のブドウ糖が過剰になり、体の細胞や組織を作っているタンパク質と結びついて「糖化」が起き、AGEができる。
糖化によってつくられるAGEは、全身の健康に影響をおよぼし、老化を促し、多くの病気の原因となることが知られている。AGEは、動脈硬化・心筋梗塞・脳梗塞・腎臓病・骨粗鬆症・認知症などのリスクも高める。
糖化は空腹感や食欲を増大させる
AGEは、細胞内で糖を代謝するときに自然に発生するが、「焼く」「揚げる」「炒める」といった調理によっても生成され、多くの加工食品に含まれているという。
糖質とタンパク質を含む食物を加熱すると褐色になるのは糖化(メイラード反応)によるもので、たとえばフライパンやバーベキューで焼いた肉や、ソーセージ、ベーコンなどに多く含まれる。
ポテトチップスやフライドポテト、こんがり焼けたホットケーキなどの高熱で加工した食品にも、AGEが含まれる。こうした食品は、できれば避けた方が良い。
「糖化は、食物をおいしくしたり、見た目を良くしたり、こんがりとした香りを強め、空腹感や食欲を強めます」と、米国のグレン医学研究財団のバック加齢研究所で加齢と栄養・代謝について研究しているパンカジ カパヒ教授は説明する。
高カロリーのスナック菓子や菓子パンなどの超加工食品やジャンクフードが、体に悪いことを理解していても、つい手が伸び、食べすぎてしまうという経験を誰しももっている。
そうした超加工食品やジャンクフードには、AGEが含まれており、空腹感や食欲を増大させ、さらに食べすぎにつながるという”負のスパイラル”におちいりやすいことが、同研究所の研究で明らかになった。
AGEの蓄積を抑制することが肥満の予防・改善に有用
研究グループは今回の研究で、過食の原因となる生化学的シグナル伝達経路を明らかにするため、いくつかのAGEを精製し、そのうち摂食量を増加させる2つのAGEを発見した。
特定のAGE分子により媒介されるシグナル伝達経路により、摂食と神経変性が促されるメカニズムの一端を解明した。
糖質や脂肪を多く含む加工食品を食べすぎると、この経路が活性化させ、AGEのレベルが上昇しやすくなる。AGEが豊富に含まれる食品が身の回りに多くあることが、AGEの蓄積と、過食を促している可能性があるとしている。
AGEを除去する体の能力は年齢とともに低下し、その蓄積は炎症や酸化ストレスを引き起こし、血管硬化・糖尿病・高血圧・腎臓病・がん・神経障害などなど、加齢にともない増える病気のリスクを高める。
「AGEの蓄積を抑制することが、糖尿病や肥満を予防・改善するのに有用である可能性があります」と、カパヒ教授は言う。
加熱調理でのお勧めは「茹でる」「蒸す」「煮込む」
カパヒ教授によると、AGEによる体の負担を軽減するために、誰でもできる簡単なことは、AGEの多い食品をなるべく食べないようすることだ。
AGEは、加熱する温度が高いほどより多く発生するため、調理では高温で「焼く」「揚げる」のではなく、「茹でる」「蒸す」「煮込む」ことが勧められる。
ステーキ、焼き鳥、唐揚げなどの高温で加熱した肉類や、ポテトチップスやフライドポテトなど揚げものは、高カロリー・高脂肪であるだけでなく、AGEも多く含まれる。
さらには、食物繊維が多く含まれる全粒穀物も食べたり、食べすぎを防ぐことも、体の脂肪の利用を高めることにつながるので効果を期待できるとしている。
マウント サイナイ医療システムによる別の研究でも、高温で調理した食品を食べすぎると、とくに肥満などのインスリン抵抗性のリスクのある人では、AGEのレベルが上昇しやすいことが示されている。
肉などの料理方法を少し変え、「茹でる」「蒸す」「煮込む」ことが、糖尿病の予防・改善に役立つ可能性がある。
研究グループは、肥満やメタボリックシンドロームのある61人の成人を対象に食事指導を行い、「AGEの多い食事をとるグループ」と「AGEの少ない食事をとるグループ」に無作為に分けて、1年間続けてもらった。
その結果、AGEの少ない食事をとったグループは、多いグループに比べて、血糖値を下げるインスリンが効きにくくなるインスリン抵抗性が大幅に改善し、体重も減少した。
「欧米式の食事スタイルでは、高カロリーの超加工食品などが利用されており、AGEを増やしやすい食品が多くあります。そうした食品をなるべく避けるようにすることが、体の老化を遅くするのに役立つ可能性があります」と、マウントサイナイ医科大学で老年医学を研究しているヘレン ヴラサラ氏は述べている。
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