若い女性の子宮頸がんによる死亡が大幅に減少 HPVワクチンの予防接種は効果が高い

 HPVワクチンの予防接種により、若い女性の子宮頸がんによる死亡は大幅に減少したことが、米サウスカロライナ医科大学(MUSC)による米国の25歳未満の女性の医療データの解析で明らかになった。

 HPVワクチンの導入により、過去10年間で子宮頸がんによる死亡は62%減少したとしている。

 一方で、米国保健福祉省(HHS)が推進する「ヘルシー ピープル2030」では、HPVワクチン接種率を80%に引き上げることを目標としているものの、米国の13~15歳の若年女性のうち推奨されたワクチン接種を受けたのは60%程度で目標にとどいていない。

HPVワクチンにより子宮頸がんによる死亡は大きく減少

 HPVワクチンの接種が普及し、米国の25歳未満の女性の子宮頸がんによる死亡率は大幅に減少したという調査結果を、米サウスカロライナ医科大学(MUSC)がんセンターが発表した。

 米国医師会雑誌(JAMA)に発表されたこの研究は、HPVワクチンの接種が子宮頸がんによる死亡をどれだけ減らしたかをはじめて調査したもの。

 子宮頸がんの原因のほとんどは、ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染だ。HPV感染症を防ぐHPVワクチンは、米国では2006年に導入され、当初は10代の若年者のみが接種可能だったが、現在では条件を満たした45歳までの成人にも接種対象が拡大されている。日本でも、小学校6年~高校1年相当の女子を対象に、定期接種が行われている。

 「HPVワクチン接種により、子宮頸がんによる死亡の大幅な減少が示されました。過去10年間で子宮頸がんによる死亡は62%減少しましたが、これはHPVワクチン接種によるものと考えられます」と、同センターのがん予防・管理研究プログラムのリーダーであるアシシュ デシュムク氏は言う。

 過去の研究では、ワクチン導入以降のHPV感染率、前がん状態、子宮頸がんの発症率などが調査されており、いずれの指標も改善したことが確認されている。今回の研究では、HPVワクチン接種による子宮頸がんの死亡の減少が調査された。研究は、米国国立衛生研究所(NIH)の国立がん研究所の支援を得て行われたもの。

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若い世代のワクチン接種を支援する政策が必要

 「25歳未満の女性が子宮頸がんを発症するのはまれですが、この年齢層の死亡数を調査することで、ワクチンの早期の効果を確認することができます。ワクチンが導入された時点で10歳だった女性は、今回の調査の最後の年である2021年には25歳になっていました」と、デシュムク氏は言う。

 研究グループが、米国の25歳未満の女性の3年ごとの子宮頸がんによる死亡数を調べた結果、1990年代を通じて全国で50~60人だったのが、2019~2021年の期間にはわずか13人に減っていた。

 「子宮頸がんによる死亡が、これほど顕著に減少した理由は、HPVワクチンの接種以外には考えられません」と、デシュムク氏は指摘する。

 一方で、研究グループは警鐘も鳴らしている。米国保健福祉省(HHS)が推進する健康政策である「ヘルシー ピープル2030」では、HPVワクチンの接種率を80%に引き上げることを目標としているが、米国疾病予防管理センター(CDC)は2024年はじめに、13~15歳の若年者のうち推奨されているワクチン接種を受けたのはわずか60%程度だという調査結果を発表した。

 「米国のとくに最近の若者世代では、新型コロナ以降は、HPVワクチン接種を受ける人が減少している傾向がみられます。ワクチン接種率の低下は、将来に子宮頸がんの発症を増やすことにつながり、潜在的なベネフィット減少となるため憂慮すべきことです」と、デシュムク氏は言う。

 「とくに若者世代を中心に、HPVワクチン接種を受けることを推奨する支援を行うことが必要です」としている。

Cervical cancer deaths in young women plummet after introduction of HPV vaccine (サウスカロライナ医科大学 2024年11月27日)
Cervical Cancer Mortality Among US Women Younger Than 25 Years, 1992-2021 (JAMA 2024年11月27日)


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