【タバコの害の最新情報】加熱式タバコや電子タバコも肺の炎症の原因に とくに女性は受動喫煙の影響を受けやすい


 慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、主にタバコの煙を主とする有害物質に長期さらされることで生じる肺の炎症性疾患。

 新しい調査で、加熱式タバコや電子タバコなどの、いわゆる新型タバコも、COPDなどの肺疾患のリスクの上昇と関連していることが明らかになった。

 受動喫煙の影響も深刻だ。女性は、喫煙したことがない、または喫煙量が男性よりはるかに少ない場合でも、タバコの煙に対してより脆弱であり、COPDを発症する可能性が男性よりも高いことも分かった。

電子タバコにも健康リスクが 肺疾患のリスク上昇と関連

 慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、主にタバコの煙を主とする有害物質に長期さらされることで生じる肺の炎症性疾患。肺気腫や気管支炎など肺疾患の総称で、喫煙習慣を背景に中高年が発症することが多い。

 肺炎は日本でも死因の第5位になっている。タバコを吸い続けていると、たとえ息切れを自覚していなくても、肺の奥深くでは”タバコ肺”が進行している。タバコが喫煙者本人だけでなく、周囲の人の健康にも悪影響を及ぼす。

 加熱式タバコや電子タバコなどの、いわゆる新型タバコは、健康被害を減らすという考え方もある。しかし、新型タバコにより健康リスクが減るという科学的な裏付けはない。

 米国のジョンズ ホプキンス大学などによる最新の調査によると、加熱式タバコや電子タバコは、従来の燃焼式タバコに比べると、健康への影響は比較的少ないものの、やはりCOPDなどの肺疾患のリスクの上昇と関連していることが明らかになった。

 「今回の研究は、電子タバコの使用の潜在的リスクを強調するものです。電子タバコは安全であると宣伝されることが多いですが、電子タバコのエアロゾルには、中毒性や有害性をもつ危険な有機化合物や高濃度のニコチンが含まれています」と、同大学心臓病・疫学部のマイケル ブラハ教授は述べている。

電子タバコを使っている人も肺疾患リスクが2.3倍に上昇

 研究グループは、電子タバコと燃焼式タバコの両方を使用しているという8,316人を含む24万9,190人を約4年間追跡したデータを解析した。

 その結果、電子タバコを使用している人は、まったく吸わない人に比べて、2型糖尿病、心不全、動脈硬化性心血管疾患のリスクの上昇との関連はみられなかったが、高血圧とCOPDのリスクの上昇が示され、COPDのリスクは2.3倍に上昇した。

 なお、燃焼式タバコを使用している人は、高血圧、2型糖尿病、COPD、心不全、心血管疾患を含むすべての疾患のリスクが増加した。燃焼式タバコと電子タバコの併用についても、同様の結果が示された。

 これまでの数十年にわたる研究でも、燃焼式タバコは肺炎や肺疾患、心臓病、心臓発作、心不全、脳卒中などの心血管代謝疾患のリスクを一貫して高めることが示されている。

 「電子タバコは、従来の燃焼式タバコを吸う場合に比べると、健康リスクは少ないかもしれませんが、COPDなどの肺疾患をはじめとして、確実にリスクはあります。とくに若い人で、電子タバコが増えています。タバコの害について多くの人に知ってもらう必要があります」と、ブラハ教授は指摘している。

女性は喫煙や受動喫煙の影響をより受けやすい

 タバコには受動喫煙のリスクもある。受動喫煙は、本人は吸わなくても、他人が吸っているタバコの煙を吸わされてしまうこと。

 喫煙者が吸い込む煙(主流煙)だけでなく、タバコからたちのぼる煙(副流煙)や、喫煙者が吐き出す煙(呼出煙)にも、ニコチンやタールはもちろん、多くの有害物質や発がん性物質が含まれている。

 受動喫煙により、心筋梗塞や狭心症などの危険性は3割ほど高くなることが知られている。受動喫煙にさらされることが多い人は、脳卒中や肺がんなどのリスクが高くなる。

 女性は、喫煙したことがない、または喫煙量が男性よりはるかに少ない場合でも、タバコの煙に対してより脆弱であり、COPDを発症する可能性が男性よりも高いことが明らかになった。

受動喫煙の影響も深刻
喫煙経験のない女性でもCOPDのリスクは男性の2倍に

 研究は米国のワシントン大学などのよるもので、研究グループは米国全国健康面接調査(NHIS)に参加した40歳以上の女性1万2,638人と、男性1万390人を対象に調査した。

 その結果、喫煙経験のない女性でも、COPDの有病率は男性に比べて62%高く、喫煙経験のある女性では、有病率は43%高いことが示された。

 また、喫煙経験のない女性のCOPDの有病率は3%強で、喫煙経験のない男性の1.5%強のほぼ2倍に上ることが示された。

 さらに、喫煙経験のある女性のCOPDの有病率は16%で、男性の11.5%よりも高かった。

 「女性は男性に比べ、喫煙や受動喫煙の影響をより受けやすいと考えられます。タバコの煙に対する感受性の違いが、女性のCOPDの発症を引き起こしている原因である可能性があります」と、同大学医療センターのアレクサンダー スタインバーグ氏は言う。

 「先進国では、過去50年間で喫煙量が大幅に減少していますが、喫煙は依然として主要な死因であり、女性のCOPDの発症率は男性に近づいているという報告もあります。女性のCOPDの負担を減らし、女性の病気の予防、診断、治療を促進する対策が必要です」としている。

なくそう!望まない受動喫煙。(厚生労働省)
健康日本21アクション支援システム Webサイト (厚生労働省)
屋内は原則禁煙!受動喫煙防止のルールを守りましょう (政府広報オンライン)

New analysis underscores health risks of e-cigarettes (ジョンズ ホプキンス大学 4月15日2025年)
E-cigarette Use and Incident Cardiometabolic Conditions in the All of Us Research Program (Nicotine & Tobacco Research 2025年3月15日)
Women non-smokers still around 50% more likely than men to develop COPD (BMJ Group 2025年5月8日)
Gender, tobacco and chronic obstructive pulmonary disease: analysis of the 2020 National Health Interview Survey (BMJ Open Respiratory Research 2025年5月8日)


掲載記事・図表の無断転用を禁じます。
日本医療・健康情報研究所]Copyright@2025 Soshinsha.