【子宮頸がん】国際HPV啓発デーにHPVワクチンの有効性・安全性を啓発 積極的接種の勧奨が再開
子宮頸がんのほとんどはHPVの感染が原因
3月4日は「国際HPV啓発デー」だった。国際パピローマウイルス学会が毎年開催している、HPV(ヒトパピローマウイルス)について広く知ってもらうための、世界的な啓発キャンペーンだ。
HPVは、主に性交渉によってうつるウイルスで、性器やその周辺に感染する。性交渉の経験のある女性のおよそ8割が、生涯で一度はHPVに感染すると言われている。つまり、男女ともに誰でも感染するリスクのあるウイルスだ。
子宮頸がんを予防するためのHPVワクチンは、2013年に無料で受けられる定期接種の対象になった。しかし同年、厚生労働省は積極的な接種の勧奨を中止した。
その結果、接種対象者の接種率は、積極的勧奨が停止した世代では1%以下に激減した。その結果、日本では年間約3,000人の女性が、子宮頸がんにより命をおとしている。
子宮頸がんとは、ほとんどはHPVの感染が原因となる、子宮の入り口にできるがん。若い世代の女性でも増加しており、子宮を失うことになったり、命を落としかねない病気だ。
20代後半から患者数が増え、日本では毎年1万人以上がかかり、年間約3,000人の女性が亡くなっている。若い母親が子供を残して亡くなるケースもあり、「マザーキラー」とも呼ばれている。
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国際HPV啓発デーにHPVワクチンの啓発動画を放映
子宮頸がんは、HPVワクチンの接種と子宮頸がん検診により、ほぼ予防することができるが、そのことは十分に認知されていない。
HPVワクチンの積極的接種の勧奨は、2022年4月より再開することが決まった。小学校6年生~高校1年生相当の学年までの女の子は、無料で接種を受けることができる。それ以外の女性は、自費での接種となる。
HPVワクチンの接種を受けると、HPVに対する抗体が体内でつくられ、HPVの感染を防ぎ、子宮頸がんなどの発症リスクを低下できる。
HPVワクチンの有効性と安全性については多くの研究で確かめられており、十分な科学的エビデンスが国内外で蓄積されている。すでに接種が定着している海外では、日本で報道されたようなワクチン接種による「多様な症状」の増加は報告されていない。
そこで、HPVについての情報を広く発信している「一般社団法人HPVについての情報を広く発信する会」(みんパピ!みんなで知ろうHPVプロジェクト、代表理事:稲葉可奈子)は、国際HPV啓発デーに、渋谷ハチ公前広場に位置する巨大屋外広告ビジョンで、HPVワクチンの啓発動画を放映した。
同会は、HPV感染症に関する正確な知識を伝え、科学的な根拠にもとづきHPVワクチンの有効性と安全性について啓発する活動をするために、日米の医療従事者・公衆衛生の専門家によって設立された。産婦人科医や小児科医などの医療従事者、自治体職員、学校の先生、市民などとともに、HPVのことを学んでいく仕組み作りをしている。
子宮頸がんはワクチンや検診で予防できる
啓発動画は、国際HPV啓発デーに向けて国際パピローマウイルス学会が制作し、同会が翻訳・吹き替えしたもの。HPVが女性の子宮頸がんや男性の中咽頭がんなど、さまざまながんの原因となること、さらにはワクチンや検診でこれらを予防できることを啓発している。
「若者の街である渋谷で、HPV感染症・HPVワクチンについての啓発動画を放映することで、若い世代に予防できるがんの知識を提供することを目指します」と、同会では話している。
さらには、新型コロナワクチンの情報提供プロジェクトである「こびナビ(CoV-Navi)」「コロワくんサポーターズ」と合同で、YouTube Liveを開催。メディカルノートと合同で、オンラインイベント「Medical Note Live with みんパピ! インフルエンサー×専門家:みんなが聞きたいHPVワクチンと女性のヘルスケア」も開催した。
各界のインフルエンサーと子宮頸がん・HPVワクチンの専門家との対話を通じて、HPVワクチンの理解を深めることを目指している。
同会は、2020年にクラウドファンディングを実施し、得られた資金をもとに、全国772の医療機関に10万8000枚のフライヤーを配布したり、全国の中学校・高校にHPVワクチンに関するポスターを配布するなどの、積極的な活動を展開している。2021年に実施したオンライン署名活動では、得られた5万5,616筆の署名を田村憲久前厚生労働大臣に提出した。