世界で40歳前の糖尿病発症が増えている 30年で1.5倍超に増加 肥満が原因か?
世界の15~39歳の若い世代で過去30年間に、2型糖尿病が大幅に増加したことが明らかになった。
世界の若年者や若年成人の2型糖尿病の発症率は、1990年から2019年にかけて1.5倍超に増加した。
ただし、糖尿病による死亡率は、わずかに増加したのにとどまった。
先進国を中心に、糖尿病の医療が進歩しており、糖尿病の人が長生きできるようになったことを反映しているとみられる。
糖尿病の増加は、30歳未満の女性や途上国でとくに深刻だという。これらの人は糖尿病の治療を十分に受けられていない可能性がある。
糖尿病が増加した原因として大きいのは、世界的に肥満や過体重が増えていることだ。
若い世代でも糖尿病の有病者や予備群が増えている
世界の15~39歳の若年者や若年成人のあいだで、30年間に2型糖尿病が大幅に増加したことが、中国のハルビン医科大学などの研究で明らかになった。研究成果は、医学誌「ブリティッシュ メディカル ジャーナル」に発表された。
すべての国で、体格指数(BMI)の高い肥満や過体重が、糖尿病発症の主な原因となっていることが示された。
「糖尿病を発症すると、治療を一生続けなければならず、患者さんと社会に大きな負担をかけることになります。糖尿病を早期発見し、予備群の段階で対策をする必要があります」と、同大学栄養・食品衛生学部のマオチン ワン教授は言う。
これまで2型糖尿病は、中高期以降に発症することが多いと思われていたが、今回の調査で、より若い世代でも有病者や予備群が増えていることが示された。糖尿病の適切な治療を行わず放置していると、心臓病・脳卒中・腎臓病・失明・下肢切断・認知症などの深刻な合併症のリスクが高くなる。
「早い時期から体重管理をはじめることが重要で、各国の政府は、肥満がもたら問題により効果的に対処できるようにするため、具体的な政策を打ち立てることが求められています」としている。
若い人の糖尿病発症率は30年で1.56倍に増加
研究グループは、世界保健機関(WHO)などが実施している「世界疾病負担研究(GBD)」を用い、200を超える国と地域の最新データを分析した。
性別・年齢・居住地域・所得などの人口統計学的な属性を示し、社会や経済の発展の尺度となる「社会人口統計学的指標(デモグラフィック指標、SDI)」と、糖尿病などの障害や早死によりどれだけ健康な年数が失われたのかを示す「障害調整生存年(DALY)」について、2型糖尿病の発症と関連付けて調べた。
204の国と地域の15歳~39歳の若年者や若年成人の1990年~2019年のデータを使い、新たに2型糖尿病を発症した症例(発症率)、死亡数、DALYなどを推定した。
その結果、世界の若年者や若年成人の2型糖尿病の人口10万人あたりの発症率は、1990年の117人から2019年の183人に1.56倍に増加したことが明らかになった。年齢標準化された人口10万人あたりのDALY値も、1990年の106から、2019年の150に1.42倍に増加した。
ただし、年齢で標準化された10万人あたりの死亡率は、1990年の0.74から2019年の0.77へと、わずかに増加したのにとどまった。これは、先進国を中心に、糖尿病の医療が進歩しており、糖尿病の人が長生きできるようになったことを反映しているとみられる。
とくに、糖尿病より失われた健康な年数が高かったのは、30歳未満の女性と、所得の低い途上国だった。このうち30歳未満の女性は、同年代の男性よりも死亡率とDALY率が高かったが、30歳以上になると男女差は逆転するという。これらの人は糖尿病の治療を十分に受けられていない可能性がある。
15~39歳の若い世代が2型糖尿病を発症する主な原因として、以下のことが考えられるという。 ▼運動や身体活動の減少、▼不健康な食事スタイル、▼喫煙や受動喫煙、▼環境汚染(粒子状物質による大気汚染や家庭内の空気汚染)、▼体格指数(BMI)の上昇。 このうち、体重が増え、体格指数(BMI)が高くなる肥満や過体重は、すべての地域で2型糖尿病の主要な危険因子であることが示された。 ただし、糖尿病への影響は国や地域によって異なり、社会人口統計学的指標の高い先進国では、▼肥満や過体重、▼喫煙習慣、▼粒子状物質による大気汚染、▼身体活動の減少(運動不足)、▼加工肉や赤身肉の多い食事、▼糖質を加えた高カロリー飲料が、より強く糖尿病に影響していた。 「肥満と過体重は、子供・若年者、若年成人を含むすべての年齢層で、世界的に増加しています。1990年~2017年に、高BMIに起因する世界の死亡者数とDALY値は2倍以上に増加したと推定されています」と、ワン教授は言う。 「体格指数の高さは、2型糖尿病の早期発症による負担の主な原因になっています。2型糖尿病の負担を減らすためには、若いうちから食事や運動などの生活スタイルを見直し、体重管理をはじめることが不可欠となります」。 「15~39歳の若い世代で2型糖尿病を発症する原因となる危険因子は、地域や国によって大きく異なるため、糖尿病の拡大に効果的に対処するためは、それぞれの国で具体的な政策を確立する必要があります」としている。 Study shows substantial rise in type 2 diabetes among young people over past 30 years (BMJ 2022年12月7日)
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Global burden of type 2 diabetes in adolescents and young adults, 1990-2019: systematic analysis of the Global Burden of Disease Study 2019 (ブリティッシュ メディカル ジャーナル 2022年12月7日)
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