紫外線
日焼けは健康的なイメージがあり、太陽の光は骨を丈夫にするビタミンDを作るというメリットもあります。しかし、日焼けの原因である紫外線はこの30年間で緩やかに増加し、特に、有害な種類の紫外線が多いという指摘もあります。
大人では、紫外線を浴び過ぎると皮膚や眼などに悪影響を及ぼすことがわかってきました。急性では免疫機能低下、紫外線角膜炎、慢性では皮膚癌や白内障等です。子どもでは、皮膚が未熟で薄いため、大人より影響を受けやすいと言われています。子どものうちからの過剰な紫外線曝露は、大人になってから皮膚がんを誘発するなど、悪影響を及ぼす可能性があります。子どもの紫外線対策については、日本臨床皮膚科医会と日本小児皮膚学会が統一見解を示しています。
- 「学校生活における紫外線対策に関する統一見解」 (H27.9)
- 「保育所・幼稚園での集団生活における紫外線対策に関する統一見解」 (H27.9)
紫外線の悪影響の予防には、浴び過ぎを防止することが最も重要で、夏だけでなく照射量が増えてくる4月頃から予防対策を心掛けましょう。
紫外線の性質
太陽光には、赤外線・可視光線・紫外線があります。紫外線は波長によりUV-A、UV-B、UV-Cの3つに分類され、波長が短いほどエネルギーが強く、生体に有害な影響を与えます。
UV-A :315~400nm
UVBほど有害ではありませんが、皮膚の深いところまで到達し、皮膚の張りをなくし、しわの原因になります。
UV-B :280~315nm
その多くはオゾン層で吸収されますが、一部は地表に到達し、皮膚や眼に有害な影響を与えます。日焼けを起こしたり、皮膚癌になったりするともいわれています。
UV-C:100~280nm
波長が短い程傷害性は強いので、殺菌灯などに利用されています。UV-Cは大気中のオゾン層で吸収され、地表には到達しません。しかし、フロンガスなどの影響でオゾン層が破壊されてUV-Cが地表へ到達するようになると、UV-Cによる遺伝子DNAの損傷が起こり、皮膚癌の発症率が増大する危険性が指摘されています。
(注)UV-A、UV-B、UV-Cの分け方には、いくつかの定義があります。ここでは、気象庁にならって、280~315nmをUV-Bとしています。
紫外線の量と強さ
紫外線の絶対量や日射量に占める割合は季節や時刻、天候、オゾン量などにより変化します。紫外線が最も強くなる時間帯は正午頃、1年を通して最も強くなる時期は6月から8月です。
曝露される紫外線量とは、紫外線の強さに時間をかけたものです。従って、弱い紫外線でも長時間浴びた場合、強い紫外線を短時間浴びたのと同じになり、注意が必要です。
身体への影響
紫外線の身体へ与える影響は、UVインデックス※という指標を用いて評価されます。
今年の観測結果は随時気象庁ホームページで見ることができます。
良い影響 | ビタミンD生合成 |
---|---|
光線治療・・・乾癬,アトピ-性皮膚炎など | |
悪い影響 | 急性傷害・・・サンバーン,サンタン,紫外線角膜症 |
慢性傷害・・・光老化(シミ,しわ,良性腫瘍),光発癌、白内障 | |
光線過敏症 | |
免疫抑制 |
急性傷害
サンバーン(皮膚の赤化)
紫外線で皮膚に炎症が起こり、真っ赤で痛い日焼けとして現れます。8~24時間でピークになり2~3日で消失しますが、ひどくなると水ぶくれになり皮がむけます。
サンタン(皮膚の黒化)
サンバーンが消失した数日後に現れ、数週間から数ヶ月続く黒い日焼けで、メラニン色素の沈着を伴います。
紫外線角膜炎
結膜(白目)の充血、異物感、流涙、ひどくなると眼痛を生じます。雪面などで発症する雪目が有名です。夜から翌朝に発症し、24~48時間で自然治癒します。
慢性傷害
光老化
慢性的な紫外線傷害で、加齢による自然の老化とは質的に異なります。加齢による老化は皮膚の厚さや色が薄くなりますが、光老化では皮膚は色濃く厚くゴワゴワになりシミ、しわとなります。紫外線が原因で起こるシミは、頬やこめかみに出来やすく薄茶色で、一度できると消失しないのが特徴です。
光発癌
長年にわたり日光を浴び続けた場所に発生する癌で、日光角化症、有棘細胞癌、基底細胞癌、悪性黒色腫(メラノーマ)があります。近年では、早期で9割以上、少し進行した状態でも7割以上が治るとされています。治療の基本は「手術」ですが、「放射線治療」を行う事もあります。
白内障
白内障は眼科疾患の中で最も多い病気で、80以上のタイプがあると言われています。日本人では皮質白内障が多く、紫外線との影響が知られています。初期にはレンズの役割を担う水晶体が硬くなるため老眼が進み、濁りが強くなると視力が低下、進行すると失明に至ります。治療は混濁した水晶体を眼内レンズと置換する手術があります。
光線過敏症
健康な人では何ら問題が生じない程度の日光照射でも、肌が露出している部分にだけ、赤みや痒みなどの異常反応が起きることがあります。
免疫抑制
紫外線で皮膚に炎症が起きると、それがもとで口の周りの単純ヘルペスが再発することがあります。
予防
長時間、屋外で日光を浴びるなど、日焼けの可能性があるときには、特に紫外線対策が必要です。紫外線を防ぐために、以下のことに注意しましょう。
- 紫外線が強い時間帯(午前10時から午後2時)は外出を控える
- しっかりとした生地の長袖・長ズボンを着用
- つばの広い帽子や紫外線を遮断する日傘・サングラスを利用
- 太陽灯や日焼け用機器などからの紫外線を避ける
- 外出の時は肌の露出部分に日焼け防止剤を塗る(SPF値※、PA分類※を確認する)。
- また、汗などで流れ効果が弱くなるので2~3時間おきに塗りなおす
- 肌の弱い人は、紫外線吸収剤を含まないケミカルフリー(ノンケミカル)(物理的に紫外線を反射する)の日焼け防止剤の使用を検討する。使用の際はパッチテストを行って肌の状態を観察する
※SPF(sun protection factor)値: UV-B防止効果の指標。50までの数値で示され、SPF値が高いほどUVB防止効果が高い。
※PA分類(protection grade of UV-A): UV-A防止効果の指標。3段階があり、+が多いほどUV-A防止効果が高い。
日焼けをした場合
適切な対処が必要です。軽度なら保冷剤などで冷やし、ほてりが治まったら保湿剤をぬります。水ぶくれが出来ていたら皮膚科を受診しましょう。
疾病 | 症状 | 考えられること、気をつけること | 対応 |
---|---|---|---|
日焼け | 水疱のある日焼け | Ⅱ度熱傷と同様、真皮まで達している可能性がある。 | 受診をお奨めします |
光の照射なしで、顔や首筋が日焼けしたような症状 | 1.光線過敏症の可能性がある。 | 受診をお奨めします | |
2.薬の副作用の可能性、服用・使用中の薬剤を確認する。 | 受診をお奨めします | ||
水疱のない日焼け | 1.患部を十分に冷やす。 | ||
2.炎症症状に対しては、消炎成分を含む軟膏を、炎症がひどい場合は、副腎皮質ホルモン含有の外用薬を使用する。ただし、感染に注意する。 | ウフェナマート 副腎皮質ホルモン |
||
3.皮膚の乾燥に対しては、保護成分含有の外用薬を使用する。 | ヘパリン類似物質 | ||
ホクロ | 大きくなっている。しこりがある。盛り上がってきている。増えてきた | 基底細胞癌、有棘細胞癌、メラノーマの可能性がある。 | 受診をお奨めします |
シミ | 左右対称のシミがある | 肝斑(かんぱん)と呼ばれるシミ。女性に見られ、左右対称に広がる、褐色で自然に消失するのが特徴。女性ホルモンのバランス、ストレスなどが原因と考えられている。 | 生活環境を整える |
シミやホクロの鑑別は一般の人には難しく、気になる場合は皮膚科を受診しましょう。
紫外線に関する科学的知見や関連情報は下記から得られます
- 1.紫外線 環境保健マニュアル 2020 環境省
- 2.全国の紫外線情報(紫外線予報)
紫外線情報分布図:全国 気象庁
紫外線指数 (財)日本気象協会 - 3.紫外線による 健康影響 – 環境省へようこそ! 環境省
- 4. 絵とデータで読む太陽紫外線 (国研)国立環境研究所 地球環境研究センター
- 5. 上手に選ぼう 日焼け止め化粧品 東京都健康保険安全センター