なぜ朝食は食べた方が良いのか? 糖尿病や体重の管理が改善

 朝食をしっかり食べると、体重コントロールに有利なだけでなく、脂質異常症の発症リスクも低くなることが、研究で明らかになった。

朝食をとらないと食事が夜型になる

 「朝ごはんはしっかり食べましょう」――健康増進のために朝食が必要なことは理解しているし、子どもの頃から何度も聞かされている。しかし、朝食よりも、もっと睡眠をとりたい、痩せたい、といったことを優先している人も多いのでないだろうか。

 しかし、朝食をとらないで、食事が夜型になると、体重が増えやすくなるだけでなく、血糖や脂質などの代謝にも悪影響があらわれることが明らかになった。

 朝食を抜き、その日の最初の食事が昼食で、夕食を食べる時刻も遅い――こうした生活スタイルは睡眠と覚醒のサイクルを狂わせるおそれがあるという研究が発表された。朝食を抜くことは、睡眠・起床・食事という体の24時間周期の自然なリズムを乱し、体重増加をまねき、脂質の代謝にも悪影響を及ぼすという。

 「食事の時間が夜型になるのは、考えられている以上に危険なことです。食べる時刻が遅いと、血糖、インスリン、中性脂肪、コレステロールの値が増加することで、肥満や2型糖尿病、心臓病などに関わるホルモンのマーカーが悪影響があらわれます」と、ペンシルベニア大学ペレルマン精神医学大学院心理学部のケリー アリソン氏は言う。

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食事が朝型になるとエネルギー代謝やホルモン分泌が活性化

 研究には9人の健康な成人が参加し、クロスオーバー試験として実施された。(1)食事時間が早め(午前8時から午後7時までに3回の食事と2回の軽食をとる)と、(2)食事時間が遅め(昼の12時から午後11時までに3回の食事と2回の軽食をとる)の2つの条件を設け、参加者に(1)か(2)のどちらかの食事法を8週間続けてもらい、2週間のウォッシュアウト期間を挟んで、食事法を交換してまた8週間続けてもらった。

 その結果、食事の時間が遅いと体重が増加しやすく、インスリン、空腹時血糖、コレステロール、中性脂肪などの値が上昇することが分かった。「呼吸商」とは、生体において呼吸の際に排出される二酸化炭素量と、摂取した酸素ガス量の比を示す。呼吸商は生体内の代謝物質によって変動する。調べたところ、食事の食事の時間が遅いと脂質の代謝が減少し、炭水化物の代謝は増加することが示された。

 一方で、食事の時間が早いと、体重が減少しやすく、エネルギー代謝やホルモンの分泌などが活性化することが分かった。とくに夜遅くに食事をすると食欲が亢進しやすく、睡眠時間が短くなりやすいという。

食事サイクルがグレリンやレプチンにも影響

 24時間のホルモン分泌を調べたところ、食事が朝型になると、食欲を促進する作用のあるグレリンの分泌のピークが昼間にあることが分かった。一方で、食欲を抑制し、エネルギー代謝を活性化する作用のあるレプチンは長く作用し、体重増加を抑えられることも判明した。

 「食事をとるタイミングなどの生活サイクルが、体重コントロールや健康マーカーに重要な影響を及ぼすことが分かりました。食事のタイミングを朝型にし、睡眠時間を一定にするだけで、体重をコントロールしやすくなります」と、アリソン氏は言う。

 「生活スタイルを変えるのは容易ではありませんが、なるべく早い時間に食事を済ませるだけで、健康への慢性的な悪影響を取り除くことができる可能性があります」。

朝食をとらない男性は、脂質異常症のリスクが1.4倍に

 韓国の研究では、朝食をとる習慣のない人は、特に男性で脂質異常症の発症リスクが高くなることが示された。

 脂質異常症とは、血液中のコレステロールや中性脂肪などの脂質の量が異常になった状態のことで、動脈硬化や2型糖尿病と密接なつながりがある。

 脂質異常症を放置していると動脈硬化が進行し、心筋梗塞や脳梗塞といった命に関わる病気に至ってしまう。韓国でも経済成長によって生活習慣が変化し、患者が増えているという。

 研究の対象となったのは、2013~2016年に韓国で行われた健康栄養調査に参加した30歳以上の男女1万874人(男性4,858人、女性6,016人)。

 脂質異常症の診断には、血液検査による総コレステロール、LDLコレステロール、HDLコレステロール、中性脂肪の測定値を用いた。

 その結果、男性の34.2%、女性の16.9%が脂質異常症と診断された。男性では、朝食をとる頻度が低いと脂質異常症を発症しやすく、朝食を全くとらない男性は、週に5~7回摂る男性に比べて、脂質異常症の発症リスクが1.42倍に上昇した。

 このように、朝食をしっかり食べることが、健康管理のために重要であることが、科学的に確かめられている。健康的な朝食を毎日食べるようにしたい。

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