子供の喘息はコロナ禍で減少 感染対策により呼吸器ウイルス感染が減少?
子供の喘息の新規診断数は、新型コロナ対策で2020年3月に全国一斉休校が実施された後に著しく減少し、その後も15ヵ月にわたり低水準で推移していることが、岡山大学の調査で明らかになった。
子供の喘息の減少傾向は、鼻や喉など上気道に炎症を起こすライノウイルスや、発熱・鼻汁・咳などの風邪のような症状が出るRSウイルスについての傾向とも近似しており、呼吸器ウイルス感染症と子供の喘息発症との関連が示唆されている。
「喘息を発症するリスクの高い子供にとって、これらの呼吸器ウイルス感染を予防することは、喘息発症を抑えることにつながるかもしれません」と、研究者は述べている。
子供の喘息はコロナ禍で減少 2歳以下の子供では72%減少
668.74件から295.53件に59%減少した
子供の喘息の新規診断数は、新型コロナ対策で2020年3月に全国一斉休校が実施された後に著しく減少し、その後も15ヵ月にわたり低水準で推移していることが、岡山大学の調査で明らかになった。
喘息診断数は、月平均で59%減少しており、これはアトピー性皮膚炎(同20%減少)と比べても顕著としている。また、呼吸器ウイルス感染症にかかりやすい2歳以下の子供では、月平均72%減少とさらに目立つ。
子供の喘息の減少傾向は、ライノウイルスやRSウイルスについての報告された傾向とも近似しており、呼吸器ウイルス感染症と子供の喘息発症との関連を示唆するものとしている。
「喘息発症のリスクの高い子供にとって、これらの呼吸器ウイルス感染を予防することは喘息発症を抑えることにつながるかもしれません」と、研究グループでは述べている。
研究は、岡山大学学術研究院医歯薬学域の頼藤貴志教授、松本尚美助教の研究グループによるもの。研究成果は、米国アレルギー喘息・免疫学会の学術誌「The Journal of Allergy and Clinical Immunology: In Practice」に掲載された。
「コロナ禍では、新型コロナ自体だけでなく、パンデミックにともなう人々の生活行動様式の変化が、子供たちの身体や心の健康に大きな影響を与えたと考えられます。こうした影響を調べることで、未来を担う子供達の健康を守ることに貢献できれば嬉しいです」と、松本尚美助教は述べている。
子供の喘息はしっかり治療すれば良くなる ”症状がない生活”を目指して
日本小児アレルギー学会によると、喘息は、男の子、アレルギー体質がある子供、生まれつき気管支が敏感な子供、生まれたときの体重が少ない子供、肥満がある子供、遺伝的な体質をもつ子供などに起こりやすい。
さらに、ダニなどのアレルギーを起こす原因物質(アレルゲン)、かぜや気管支炎、肺炎を引き起こす一部のウイルス、タバコの煙などの室内空気の汚染物質や大気汚染物質などの環境因子にさらされることで発症しやすくなる。天気、運動、一部の薬、月経、アレルギー性鼻炎なども、喘息の悪化に影響している。
喘息で入院する子供や、喘息が原因で亡くなる子供は減ってきており、2017年の統計では、日本国内で喘息が原因で亡くなった0~14歳の子供はゼロになった。
「喘息の治療は進歩しており、しっかりと治療すれば喘息の症状が良くなることが示されています。ただし、標準的な治療を知らずに、ガイドラインに示されている治療目標である”症状がない生活”に到達していない子供は、まだたくさんいます」と、同学会では述べている。
岡山大学学術研究院 医歯薬学域 疫学・衛生学分野
Impact of COVID-19 pandemic-associated reduction in respiratory viral infections on childhood asthma onset in Japan (Journal of Allergy and Clinical Immunology: In Practice 2022年9月26日)
患者さん向け 小児ぜん息治療ガイドライン (日本小児アレルギー学会)
小児気管支喘息治療・管理ガイドライン2020 (日本小児アレルギー学会)
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